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27:旦那様との終わりに※
一日目は舞鶴の町を二人で散策した。
まだ足の傷が癒えていないから人力車で行動できる範囲にしようと提案したのは一葉だった。それでも保胤の身体に触らないだろうかと気が気ではなかったが、当の本人はとても楽しそうだった。
「ほら、一葉さん、見えてきましたよ」
旅館から車夫をつかまえて、二人は天橋立を目指した。天橋立は砂州の地形をしており、細長い砂浜が岸と平行に延び、何千本もの松が生い茂っていた。
海岸入口で人力車を降り、一葉達はその松林の中を歩いた。時折、木陰で足を休めながら青い海を眺めた。
「寒くありませんか?」
「大丈夫です! 気持ちいいですねぇ」
「ええ」
潮風の匂いと冷たい風。天候にも恵まれて、真冬の気温で空気は澄み、水面は太陽の光でキラキラと輝いていた。
人気が少ないからか、いつの間にか保胤はマスクを外していた。時折足を止めて、気持ちよさそうに潮風を顔に受ける。
その穏やかな横顔を見るのが一葉は嬉しかった。
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