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35.色と姿勢と人生と
突然だが、私にとっての色彩界の絶対王者(なんじゃそりゃ)は常に青だ。
おかげで“バッグの中ですぐに目立つ”と勧められたターコイズのお財布も、他の小物のみならずバッグの裏地までブルーときては、もはや間違い探しゲームで、毎回もたつくこと甚だしい。
ジュリエット・ビノシュの強張った頬が印象的な映画「トリコロール(青)」の壁一面青の部屋に憧れて、予算を組んではブルーの家具をあれこれ揃えたと言うのに、“黒とシルバー”好きな夫とはなかなか共存出来ず、バンコクではそれでも何とかリビングだの廊下だので生き延びていたのだが、ここミュンヘンでは、とうとうほぼ全てが私の部屋に押し込められてしまった。小さな部屋に、まさに林立と言う感じの白木の本棚が四つ+青系の家具なので、わりと外枠だけは、大好きなティファニーの店内のようではあるかもしれない(ひいき目に見て)。勿論ショーケース抜きの。
余談だが、バンコクで住んでいたアパートは外壁がティファニーブル―だったので、その界隈でも結構目立っていた。なので、初めて訪ねてくるゲストにはもれなく”公園前のティファニーブルーの建物”と伝えていた。しかし、あるイギリス人の友だちが「ティファニーブルーってどんな色かわからなかったら参った。これなの? でもこれはdusty blueって言うわね、普通。それかduck egg blueって言うか。ティファニーブルーって言い方、アジアではするの? イギリスではないわ」とのたまわったものだから、虚を突かれた。
――当たり前と思っていることがそうじゃない――
海外生活の方が日本での暮らしより長くなるにつれ、もうこれは金科玉条のように身に染みこんでいると思っていたのだが、いやどうして。まだまだである。
改めて調べてみたらティファニーブルーは別名robin’s egg blueだそうだ。同じ鳥の卵でもコマドリ。惜しい。でもだからと言って、次回からrobin’s egg blueと言ったところで、今度はコマドリの卵ってどんな色なの?と訊かれそうだ。きっと夫に言ったら「なんにせよ青だろ」と言われておしまいに違いない。はい、その通りでございます。
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