38.定番と停滞

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 いや、違う。下着の話ではないのだ。  今日のエッセイは何を書こうかと思いながら朝食の準備をしていて気付いたことがあった。 ――好きなモノは存外変わらない――  出来上がったトレイを見れば、20年前初めてミュンヘンで暮らし始めた時に、あまりの美味しさに仰天した老舗KöllnメーカーのSchoko Müsliにドライクランベリーを混ぜ、ここは進化した(?)ところだがカカオニブをふりかけた深皿がスタンバイしていた。結局やっぱりKöllnのMüsliなのだ、何年経っても。  でも何よりファッションにその傾向は顕著だと思う。親友Sと「どんなYouTubeを観るか」という話になって(実は去年の冬までYouTubeは殆ど観たことがなかったのだが)、圧倒的にファッション関係(あとは男子パレーボール)が多いことに気が付いたのであるが、その動画を通して、好きなファッションの傾向が何と懐かしのOliveのしかもB.C.B.G特集の時から変わっていないと言うことにも気付いた。以前にも触れたことがあるが、好きなのはトレンチ、チェスターコート、紺ブレ、パール、スカーフ、コニャック色のバッグとブーツ、カシミヤのニット、時計……(色は積極的に取り入れる方なので、ネイビー以外はカラフルではある)。  東南アジアに最近まで10年以上住んでいたので、大方着るのは夏物だったし、汗だくだからパールは着けられないし、スカーフなんて熱すぎて見るのも辛い、湿度が高いから皮製品はすぐ白いカビが吹き出てしまう。とまあ、好きだったもののことは記憶の彼方のまま日々を過ごしていたのだが(子育てとも重なったので、ともかく機能性が最優先だったのも無論大きい)、ヨーロッパのど真ん中に戻って来たら、好みの記憶も戻ってきた。と言うか押し寄せてきた。まるでそれこそ何十年かぶりの同窓会のように。
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