35.色と姿勢と人生と

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 話を戻すと、ともかくそんな訳で、洋服だろうが小物だろうが様々な青色を氾濫させている私だが、秋も後半になると俄然赤が恋しくなってくる。ロイヤルスチュアート(赤のタータン)が特に。  我ながらわかりやすい。テラスでいそいそとショールを腰に巻きつけながら苦笑した。紅葉と気候に見事に左右されるこの単純さ。と書いていたら、目の前でが舞い起こった。桜吹雪の紅葉版である。うん、やっぱり赤だなと頷く。  冬限定、しかも年内に、その赤をキャメルと組み合わせる率が異様に高くなる。カラーで言えば私は典型的なサマーのブルーベースなので、茶系はまずいのだが、キャメル、しかもタートル(顔ギリギリで大変アウト)をこれまたキャメルのコートに合わせて赤を巻いたりする。  勿論顔は黄色くくすんでいる。霧がかった白灰色の空気に茶ばむアジア人。でも色合わせでウキウキしているから脳内はバラ色。いやこれってどうなんだろう。  確かに街でも、秋・冬はともかくベージュに白の組み合わせをよく見かける。  大抵は皆さん金髪だから、トータルで大変しっくりとまとまっていらっしゃる。ベージュのムートンやカシミヤのロングコートに、オフホワイトのタートルとパンツ、それに明るめの茶色の膝下ブーツと同じく茶系のバッグ。瞳も淡いブルー、グレー、茶色だからグラデーションがとてもスムーズに流れる。  私の住んでいる地区であるシュバービングやマリエンプラッツ、オデオンプラッツ辺りでよくこういう格好の女性たちに出くわす。綺麗だなあとそっと二度見する。  長い手足もさることながら皆姿勢が良い。すっと伸びた背筋でカツカツ歩く(ティーンは無論除外。全世界共通で群れてちんたらしてるから。ともかく楽しくて仕方ないのだ)。民族の違い――例の夫の嫌がる言い方だが――はまあ当然だし、お互い隣の芝生だろうが(長身なことや頭が小さいこととか、意外に悩んでいるドイツ女性が多いと聞いて仰天した)、”姿勢”、これはもれなく全人類に与えられているし、しかもある程度は自分で整えられる。
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