カメラ越しの君。

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 締め切ったカーテン。隙間から差し込む光で、朝が来たと気が付く。  もっとちゃんとした遮光カーテンだったら、気づかずに済んだのに。  なんてことを思いながら、僕はぼんやり差し込む光の先を見た。  そこには一つ、黒くてしっかりとした一眼レフカメラが置いてある。  彼女との、思い出の品。  横に置いたノートパソコンと、箱の中の大量の写真。どれも彼女の姿ばかり映っているから、見えないように閉じてしまい込んだもの。  ああ、でも。  まだカメラの中のSDカードには今、データはなかったはず。  ふと、立ち上がってカメラを手に取った。すっかりほこりをかぶっていたが、まだかろうじて電源は入るようだった。  それを首から下げて、部屋を出た。
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