カメラ越しの君。

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 朝の五時を少し回ったこの時間は、人っ子一人歩いていない。  少し遠くで車が走り去る音が響いたが、それもすぐ止んだ。  しん、と静まり返ったこの町はまだ、眠っている。  ゆっくりと歩きながら、そっと首から下げたカメラを撫でる。手に少し、ほこりが付いて、Tシャツの裾で拭った。  向かった先は、高台にある公園。背の高い木々がまばらに植えられているが、やたら綺麗にされているこの場所は、僕と彼女がよく一緒に過ごした場所だった。  ついたとたん、ぐっと胸を押しつぶされるようで、唇をかんだ。意味もなく目から流れるしずくが、Tシャツにぽつぽつと模様を作る。  それでも。  衝動に駆られるがまま、カメラを起動して、高台から街を見下ろすようにレンズを向けた。  太陽のあたたかな光が当たり、ゆっくりと目を覚ますように明るくなっていく。その一瞬を逃さぬよう、パチッと指を押しこむ。 「――相変わらずだね」
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