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パッとレンズに顔が映って、ハッと瞬きをする。
「――……え、れ、怜奈?」
見間違えるはずもない。ぱっちりとした大きな目。いつも困ったように見える八の字のような眉。長くて美しいまつげ。
もうすっかり見慣れた、大切な人の顔がそこに映っていた。
レンズ越しに、彼女はにっと白い歯を見せて笑う。
「久しぶり、貴也」
慌ててカメラから目を離し、前を見る。だが、そこに彼女はいない。目をこすってみても、瞬きをしても、彼女は見えない。
「な、なんで……」
「――カメラ越しじゃないと見えないよ」
りん、と澄んだ声だけが直接脳に響くように聞こえた。
言われるがまま、もう一度ファインダーを覗き込む。
「……見える」
「でしょ」
彼女はいたずらに笑って、それからじいっとこちらを見て言った。
「元気だった?」
「……いや」
「だよね。知ってた」
困った子でも見るように眉毛をさらに八の字にして「まったくもう、」と言いながら笑う。
そういえば、と思い出す。彼女はよく笑う人だったな、と。
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