2. 記憶のノイズ

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「記憶回復のためにも、とりあえずはお父さんを探すことを優先した方が良さそうですね。恐らく楓ちゃんと苗字は同じはずだろうから...。えっと、楓ちゃんの苗字ってなんだっけ?」 「津麦(つむぎ)です。津波の津に麦焼酎の麦で津麦と書きます」  楓は言葉の説明と共に、机に指で漢字を書いて説明を試みる。 「おお、麦焼酎とな。10代くらいの若者とは思えない渋いワードチョイスですな。でもおかげで漢字はよく分かったよ。ありがとう」 「え、嘘だ。遊馬さん、麦焼酎って何か変だった?」  神原の一言が余程心に刺さったのか。楓は焦りと恥じらいを露わにして遊馬の方へと素早く振り向いた。 「いや、変じゃないと思うよ。神原が過剰な物言いをしているだけさ」 「だよね、良かった〜」  遊馬と楓のやり取りを目にし、神原は何やら不思議そうな表情を浮かべていた。 「ん? まあいいか。で、苗字が『津麦』の方を手当り次第探そうって話です。珍しい苗字ですし、案外お父さんもすぐに見つかると思うんですよ」 「それには同感だな。というか探すも何も、俺たちの知り合いに津麦っているじゃないか。ちょうど来週辺りでこっちに来てもらう予定だから、まずはそこから当たってみよう」 「ああ、この前の実験で共犯者になってくれたシスコン兄妹のことですか。了解です」  楓は神原の放った共犯者という言葉に眉をひそめ、ふたりの方をじっと見つめる。その様子に気付いた遊馬はあたふたとしているが、神原は呑気にマグカップを手にコーヒーを味わっていた。  そんなこんなで今後の楓の父親捜しの方針が決定し、『楓ちゃんの探し人見つけちゃうぞ☆』会議は無事に終了した。
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