3. 街に出よう

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 全員分の料理がテーブルに並び、瑞沢がエプロンを外しながら厨房から出てきた。脱いだエプロンをカウンター席の椅子の背もたれに雑に投げかけ、「よしっ」とガッツポーズを決めながら遊馬たちの待つテーブル席へと足早に歩み寄る。  瑞沢がテーブル席に着くと、皆が一斉に箸を取って食べ始めた。美味いと言葉を漏らしながら料理を楽しむ3人を見て、彼女は満面の笑みを浮かべていた。 「さて、そろそろ色々と聞かせて貰おうかな。まずはそちらの可愛いお嬢さんから。お名前は? 何歳? なんでそんなに可愛いの?」 「えと...えっと。か、かえでって言います。年齢は17歳だと思います。えっと次は...なんだっけ?」 「瑞沢、そんな一気に問い詰めるなよ。楓も困ってるじゃないか」 「ごめんごめん、ついうっかり。じゃあひとつずつ。かえでちゃん、なんでそんなに可愛いの?」 「はへ?」  楓は意図の分からぬ質問に一瞬きょとんとした表情を浮かべた。直後、隣の遊馬が楓だけに聞こえる声で「ごめん、忘れてた...」と謝罪の言葉を述べた。楓は状況を理解できず、再びきょとんとした表情を浮かべている。 「もしよかったら週1回ペースでもいいからここに遊びに来ない? 美味しいご飯をご馳走するからさ。いや、週1と言わずに毎日でも良いよ!てかもうここに住む?」  遊馬は肘をついて頭を抱えていた。そう、瑞沢は幼い風貌の少女が大好きなのだ。つまり楓の容姿が彼女の好みにピッタリという訳だ。最近になって少しは落ち着いたものの、遊馬と一緒だった学生時代では、持ち前の社交性で気に入った少女を見つけては見境なく飛び込んでいく習性が特に酷かった。 「おぉ、なんか圧がすごいです。さすがに毎日は難しいけど、週1くらいならいい...のかな?」  楓が首を傾げながら遊馬の方へと疑問を投げかけた。 「週1でタダ飯食えると考えたらまあ悪くない話か。いいんじゃないか。ただしそれには俺も同行する。瑞沢を楓とふたりきりにしたら何しでかすか分かったもんじゃない」 「瑞沢さん、一体普段何してたらこんな言われ様になるんですか...。あ、その楓ちゃん護衛隊に僕も混ぜてくださいね。タダ飯食いたいし」 「失敬な! かえでちゃんには何もしないよ。ただ一緒の時を過ごして、ゆっくりお話しがしたいだけだよ」  瑞沢の様子を見て、楓は苦笑いを浮かべていた。 「思考が完全におっさんのそれなんですよね。これは僕と遊馬さんで楓ちゃんを護衛するしかないですね」  遊馬は何度も深く首を縦に振って、神原に同意を示していた。
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