ルーズリーフ

1/2
5人が本棚に入れています
本棚に追加
/8ページ

ルーズリーフ

 シャーペンのノブの部分を何度押しただろう。長くなった芯を、ルーズリーフに押し付けて引っ込めてを繰り返して。 「よう!!飛鳥。明日から冬休みだな~って・・・なに、ルーズリーフとにらめっこしてんのさ」  廣瀬七緒が、僕に明るく声をかける。上体を丸めて隠している文字を見ようと、顔を近づかせてくる。 「廣瀬には関係ないこと!!見んなよ―」  唇を尖らせた廣瀬は、なにさと腰に手を当てる。ブレザー姿もようやく様になってきた中学一年の冬休み前。廣瀬はボブヘアーでさらさらの髪をなびかせて、背後からこちらに近づいてくる人物にも教えている。 「ねぇ、遠野ひどくない?」  遠野は僕をチラリと見るけれど、視線を反らせて、すぐに廣瀬を見る。遠野とは、小学生の頃からの付き合いが続いている。 「七緒、人の書くもの見ちゃいけないよ」  変わらず優しい男で、僕の心はトクンと跳ねる。鳥の巣みたいな天然パーマで細身で、切れ長な焦げ茶色の瞳で、廣瀬を見て伸ばした手を、廣瀬の頭にそっと置く。 「付き合い始めたからって見せつけんな!!」  僕は悔しくて悲しくて、クラスメイトが茶化す前に言ってやる。  廣瀬の視線が、遠野に向けられているうちに、そっとルーズリーフを折り畳んで胸ポケットに仕舞う。
/8ページ

最初のコメントを投稿しよう!