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ルーズリーフ
シャーペンのノブの部分を何度押しただろう。長くなった芯を、ルーズリーフに押し付けて引っ込めてを繰り返して。
「よう!!飛鳥。明日から冬休みだな~って・・・なに、ルーズリーフとにらめっこしてんのさ」
廣瀬七緒が、僕に明るく声をかける。上体を丸めて隠している文字を見ようと、顔を近づかせてくる。
「廣瀬には関係ないこと!!見んなよ―」
唇を尖らせた廣瀬は、なにさと腰に手を当てる。ブレザー姿もようやく様になってきた中学一年の冬休み前。廣瀬はボブヘアーでさらさらの髪をなびかせて、背後からこちらに近づいてくる人物にも教えている。
「ねぇ、遠野ひどくない?」
遠野は僕をチラリと見るけれど、視線を反らせて、すぐに廣瀬を見る。遠野とは、小学生の頃からの付き合いが続いている。
「七緒、人の書くもの見ちゃいけないよ」
変わらず優しい男で、僕の心はトクンと跳ねる。鳥の巣みたいな天然パーマで細身で、切れ長な焦げ茶色の瞳で、廣瀬を見て伸ばした手を、廣瀬の頭にそっと置く。
「付き合い始めたからって見せつけんな!!」
僕は悔しくて悲しくて、クラスメイトが茶化す前に言ってやる。
廣瀬の視線が、遠野に向けられているうちに、そっとルーズリーフを折り畳んで胸ポケットに仕舞う。
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