2話 思い出の家

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2話 思い出の家

翌朝、レインは私に言った。 「村を出るんだったら、ぼくも一緒に行くからね!」 **** 「相変わらずのシスコンぶりだな」 両手を頭の後ろに組んで、家の外壁にもたれかかるカーベル。 「・・まぁ弟が一人でこの村に残られても心配だしね」 私は幼馴染のカーベルの隣に座っていた。 村の外、今日は陽気が暖かくて気持ちがいい。 「こっそりリンが一人で、出ていけるとも思ってなかったけどな。リンは結構抜けてるからまぁいいんじゃね?」 「・・まぁそうかもだけどさ」 イラッとしたが反論できない。 私は意外と抜けているところがあるのだ。 「俺もそのうち王都に行くから、また会えるかもな」 カーベルは冒険者になるために、王都に行くと言っていた。 同じ冒険者になれば会えるかもしれないね。 世の中結構狭いから。 **** 引っ越しが決まってから、弟は忙しく動き回っているようだった。 「王都に家を借りるのに探し回っているのだろうか?」 相場は分からないけど、安くない気がする。 「レイン?王都は高いだろうから、安いところを借りられればいいんだからね?」 午後、紅茶を飲んでいる時に弟に言ってみた。 「ん?何言ってんの姉ちゃん。家は王都にあるから大丈夫だよ?」 ?? 王都に家がある? 聞いたことが無かった。 聞いてもいなかったけど。 どういう事だろう。 「家に入るのに準備してるだけだから、ああ、村長さんにも挨拶に行ってこないと」 「あ、そうだ。自分の荷物まとめておいてくれよ?」 レインはそう言うと、ぱたぱたと家を出て行った。 「荷物って・・」 私は私物はあまり持っていない方だと思う。 洋服、手鏡、クシくらい。 本が数冊。 そういえば、母の荷物ってすごく多かった気がする。 何故か豪華なドレスとかも持ってたりしてたっけ。 荷物はまだ3年前のままだったりする。 「あ、そうだ!」 私は母の部屋に行って、化粧台の引き出しを探してみた。 「一つくらい形見で持っていくの、いいよね」 引き出しを開けると、小さい木箱が入っており、開けてみるとキレイな指輪が数個入っていた。 「これ、持って行こう」 木箱を大事に抱えて、私は母の部屋を出た。 「この家はどうするんだろう」 残しておけるのかな。 それとも売り飛ばすとか? 「思い出がある家だから、できれば取っておいてほしいかな」 外から家を眺める。 木造の二階建ての家。 「ねえちゃん。風邪ひいちゃうぞ。早く家に入って」 夕暮れ時レインは帰ってきた。 金色の髪が、夕日に照らされて赤く輝いている。 私を優しく見つめる灰色の瞳。 レインの顔が赤く染まって見えた。
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