5話 夢の共有

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5話 夢の共有

思わず、レインを自分の部屋に呼んでしまった。 私はなぜか緊張していた。 コンコン 「来たよ。入っていい?」 「どうぞ」 伏し目がちにレインはドアを開けた。 やっぱり何か変な感じだ。 いつもの元気なレインではない。 「元気ないみたいだけど、どうしたの?」 「・・・・」 あれ?話ずらいのだろうか。 「言いたくないのなら仕方ないけど・・ほら家族って私とレインだけだしね?お姉ちゃんもレインが落ち込んでると・・心配だからさ」 「・・・聞いてくれる?」 「まあ、椅子に座って」 ドア付近で立ったままのレインに、椅子に座るように勧めた。 私も向かい側に腰を下ろす。 「変な話だけど・・ぼく変な夢見るんだよね・・ここじゃない違う世界の・・それが最近は毎日でさ、ちょっと混乱してるっていうか・・」 「どんな夢?」 「うん・・。何て言えばいいのかな。違う国の普通の生活なんだけど・・ああ、日本っていう所の・・」 「え?」 「ねえちゃん?どうした?」 「・・気のせいかもしれないけど、私も日本っていう夢みたかも・・」 「やっぱり・・」 「え?やっぱりって??」 「ぼくとねえちゃんは日本で一緒に暮らしていたんだ」 レインが言うには、私は雨宮玲子という名前だったらしい。 レインは雨宮令人、玲子の弟だ。 夢を見るようになったのは1年位前のようだった。 私はそんなに詳しく見ていなかったので、変な夢程度で済んでいたのだが。 レインはあまりにも夢が鮮明の為、現実と混同してしまうことが多いそうだった。 今朝はそのせいで気分が悪かったのだろう。 「姿格好は全く違うのに、ねえちゃんは、ねえちゃんって分かるんだよね。何でかわからないけど」 「・・良かった、聞いてくれたのが、ねえちゃんで」 レインはいつもの笑顔を取り戻していた。 「誰にも言えなくてしんどかったんだよね、正直。頭おかしい奴って絶対思われる」 「私もその夢見て、気がおかしくなったのかなって思ったよ?」 「そっか」 ふふっ 二人して笑った。 気兼ねなく打ち解けあえる。 こんな感じは久しぶりだった。 **** その後私は、レインに色々聞きだした。 この屋敷は元々両親が住んでいた家で、財産が1憶ぺリルあって、屋敷の執事さんとかメイドさんは頼んで来てもらったのだそう。 こんな大きな家じゃなくても・・と私は言ったのだけど、せっかく持っている物だし、使わなきゃ勿体ないって言っていた。 「執事さんとかメイドさんとかお給料払うんだよ?一億ぺリルあってもすぐに使ってしまうよ?」 と言ったのだが、レインは「大人になるまでだよ」と言っていた。 「ねえさんもいずれは、お嫁さんに行くでしょ?そしたらこの家は売り払ってもいい」と。 ってレインはどうすんのよ? 「ぼくは適当に冒険者にでもなるよ」と笑っていた。 本気なのだろうか?
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