2人が本棚に入れています
本棚に追加
今年も12月24日が巡ってきた。今日はクリスマス・イブ。多くの子供たちがクリスマスプレゼントをもらい、フライドチキンやケーキを食べる。そして、家族とかけがえのない時間を過ごす。
将人(まさと)もその1人だ。将人は小学生。22日で今年の小学校が終わり、冬休みに入っていた。将人はこの日を楽しみにしていた。プレゼントがもらえるからだ。今年のプレゼントは何だろう。外の東京の夜景を見ながら、将人は楽しみにしていた。
「今日はクリスマスイブなのか」
「将人ー、クリスマスプレゼントよー!」
と、母、千代子(ちよこ)の声がした。どうやらクリスマスプレゼントを用意したようだ。
その声とともに、将人は部屋のある2階から1階のリビングにやって来た。そこには父、晴之(はるゆき)の姿もある。今日は日曜日で、仕事が休みだ。昼下がりからどこかに出かけていたのか、見えなかった。おそらく、クリスマスプレゼントを買ってきたのだろう。
「今年1年、よく頑張ったな」
晴之は、将人に袋を渡した。クリスマスプレゼントだ。将人は喜んだ。今年ももらえた。何が入っているんだろう。
「ありがとう!」
将人は、袋の中からクリスマスプレゼントを出した。中には、大人気のゲームソフトがあった。以前から欲しかったゲームソフトだ。将人は喜んだ。
「やったー! 大好きなゲームソフトだー!」
「よかったね」
千代子は嬉しそうだ。こうしてクリスマスプレゼントを喜んでくれるのが、何よりの励みだ。
「でも残念だね。今年はおばあちゃんからのクリスマスプレゼントがないから」
「そうだね。今年の夏に亡くなっちゃったもんね」
将人には、今年の夏まで祖母、タツがいた。だが、以前から体調を崩して入院していたタツは今年の夏、亡くなった。将人に優しくて、よく絵本を朗読してくれたタツ。だけど、タツはもういない。通夜の時も、葬儀の時も泣いていた。もう泣かないと思っていたものの、四十九日でまた泣いてしまった。それほど悲しかった。
「うん。その時は悲しかったな」
「だけど、天国のおばあちゃんが見守っているから、頑張ろうね!」
だが、将人は浮かれない表情だ。まだタツを失ったショックから立ち直れないようだ。両親はその様子を心配そうに見ている。いつになったら立ち直ってくれるんだろう。もう亡くなってけっこう経ったのに。
「うん・・・」
「どうした、寂しいのか?」
晴之は、将人の肩を叩いた。励まそうとしているようだ。
「うん」
「いつまでもくよくよせずに、前を向いて生きろよ!」
「わかったよ・・・」
もう10時だ。そろそろ寝ないと。新しいゲームは、明日になってからやろう。
「もう寝よう。おやすみ」
「おやすみ」
将人はクリスマスプレゼントの入った袋を持って、2階に向かった。どこか寂しそうな表情だ。両親はその様子を心配そうに見ている。
将人は2階から窓の外を見た。夜空のどこかに天国がある。タツはどこかで、自分を見ているんだろうか? もし見ていたら、僕をどんな気持ちで見ているんだろう。とても気になるな。
「はぁ・・・。おばあちゃん、見てるかな?」
もう寝る時間だ。タツにおやすみを言わないと。
「おやすみ、おばあちゃん」
将人はベッドに横になり、寝入った。今夜はどんな夢を見れるんだろう。
将人が目を覚ますと、そこは光の中だ。辺りには何も見えない。将人は戸惑いながら、辺りを見渡す。と、そこにはタツがいる。子供の頃に見た服装だ。まさか、天国から会いに来たんだろうか?
「あれ? おばあちゃん」
「将人ちゃん、メリークリスマス」
タツは優しそうな表情だ。クリスマスを祝っているようだ。だが、クリスマスプレゼントは持っていない。
「メリークリスマス」
「さぁ、おいで」
その声とともに、将人はタツに抱きついた。あの時と同じ温もりだ。懐かしい匂いだ。
「会いたかったよ、おばあちゃん」
「クリスマスプレゼント、あげられなくてごめんね」
タツは、今年亡くなったのを後悔していた。今年もクリスマスプレゼントを贈りたかったのに、あげる事ができなかった。
「いいよ」
「そう。いつまでも忘れないでいてくれる?」
「もちろん!」
将人は思った。おばあちゃんと過ごした日々、いつまでたっても忘れるもんか! とてもかけがえのない日々だったじゃないか。
「ありがとう」
「本当。じゃあ、安心して天国に行けるね。おばあちゃんはこれからも、天国から見守っているよ。だから、これからも頑張ってね!」
「うん!」
そして、タツは光の中に消えていった。おそらく、天国に戻ったんだろう。将人はその様子をじっと見ていた。
将人は目を覚ました。今日はクリスマスだ。まさか夢の中で、タツと再会するとは。まさか、天国のタツが起こした奇跡だろうか?
「夢か・・・。でも、いい夢だったな」
将人はカーテンを開け、外を見た。将人は驚いた。初雪だ。天気予報では降らないと言っていたのに。まさか降るとは。
「あれ? 初雪?」
と、将人はある事に気が付いた。タツの事だ。まさか、タツのクリスマスプレゼントだろうか?
「まさか、おばあちゃん? これがおばあちゃんからのクリスマスプレゼント?」
将人は空を見た。天国のタツは見えないけれど、どこかにいて、そこから奇跡を起こしたんだろう。そう思うと、タツに感謝したくなった。
「ありがとう、おばあちゃん。そして、メリークリスマス」
将人は少し、タツがいないことから立ち直れた。なぜならば、タツが今朝、奇跡を起こしてくれたのだから。
最初のコメントを投稿しよう!