いれる、いれる。

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 ***  家事を担う廿浦浦の主婦の方々ならば、共感してもらえると思う。  洗濯物を洗って、取り出した時に――ある意味一番見たくない光景がなんであるのかを。 「ぎゃあああああああああああああああああああああああ!?」  その日の夜、私は思わず悲鳴を上げていた。取り出した洗濯物にびっしりと、白くてちりじりになったものがびっしりこびりついていたからだ。  幼いころから蟲が大の苦手である私である。当初は蛆虫か何かのように見えて、腰を抜かしたのだった。が。  よく見るとそれはまったく別のもの。そう、世間のお母さんたちが激怒するアレであったのである。 ――あああああああ!これ、ティッシュ!どこの馬鹿よ、ティッシュ入れっぱなしで洗濯機につっこんだのは!!  そう。ポケットティッシュをポッケに入れたまま、洗濯機にかけたアホがいたのである。人生で、あれを一度もやらかしたことがない人はいないのではないか。ティッシュが水で溶けてボロボロになり、その結果洗濯機の中で一緒に回ってしまう現象。  当然、溶けたティッシュは原型をとどめていない。バラバラになった状態で、洗った洗濯物全体にこびりついてしまうのである。場合によっては、排水溝も掃除する羽目になる。非常に面倒くさいし、親を怒らせる原因としてもトップクラスに入るやらかしだろう。  私はげんなりしながら、衣類にくっついたティッシュをガムテープで掃除した後、再度洗濯機にかけたわけだが。もちろん、犯人をこのままにしておくことなどできない。誰がやらかしたのかはわかりきっていた。真面目で几帳面な夫と次男は違うだろうし、もちろん私も覚えはない(そもそもティッシュはポケットではなく鞄に入れる派だ)。そんでもって、中身がなくなったティッシュのビニールがそいつのポケットから出て来たとなればもう、言い逃れはできないだろう。 「アリト!」  私はカンカンになって長男を呼びつけた。 「あんたね、ポッケにティッシュ入れたまま洗濯機回したでしょ!大変なことになったんだけど!?」 「ええ!?」  そんな私に、長男のアリトは目をまんまるにして言った。 「俺、やってねーよお!ちゃんとティッシュ抜いたもんー!」 「嘘つかない!ティッシュのビニール袋が、あんたのズボンのポッケに入ってたわ。あんたじゃなかったら誰がそんなことしたっていうの!!」  この時は、かなーりきつく叱った。アリトは最初こそ否定していたものの、流石に私の剣幕に圧されたのか、やがて認めて謝ってきたのだった。  そして、約束させたのである。洗濯籠に入れる前に、必ずポケットの中身をチェックする、ということを。ハンカチなら残っていても他の洗濯物に被害は出ないが、ティッシュはどうにもならないのだ。  この日の私が怖かったからなのか、長男はそれからしばらくの間はやらかしをしなかった。ゆえに、私もほっとしていたのだが。 「いやあああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ!」
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