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再び絶叫することになったのが、夏のこと。起きてしまったのである、洗濯ものティッシュまみれ事件が!アリトのズボンを中心に、あっちもこっちも紙片まみれの大惨事である。
当然、私はブチギレて再びアリトを呼び出すのだが。
「俺やってねえよ!今度はマジで!本当の本当にやってねえってば!!」
何故か、今回はどれだけ詰め寄ってもアリトは自分の犯行を認めなかった。しまいには、いつもポジティブな彼が半泣きになって否定してくるほどである。
私の怒りも、少し経てば落ち着いてきた。そして、代わりに困惑が強くなったのである。そういえば、今回のティッシュまみれ事件は何かがおかしい、と。
――あいつのズボンを中心にティッシュが散らばってたけど……でも、今回はティッシュのビニール袋が出てこなかったわね。
他の人がティッシュを入れたままにしてしまったのだろうか。いや、私はポケットにティッシュを入れるタイプじゃないし、旦那もそれは同じだと知っている。そして、几帳面な次男はこういう失敗をするタイプでもない。何より、紙はアリトのズボンをメインにくっついているのだ。やっぱり、彼が何かをやらかしているとしか思えない。
おかしなことに、あれだけ叱ったのにそれから一週間に一度くらいずつ、ティッシュまみれ事件が発生するようになったのだ。そして、何度目かの後私はあることに気付くのである。
というのも、最初はティッシュと同じ紙だと思っていたのだが、よく見ると繊維が違うような気がする、ということ。僅かに色がついているのだ。しかも、均一にピンクや水色というわけではなく、白と赤のまだらのようになっているのである。
血ではない。赤ならば、あんな綺麗に鮮やかな色にはならないだろう。ポールペンやサインペンの赤に近い、彩度の高い色だ。
――ひょっとして、あの子のズボンに入ってた紙、ポケットティッシュじゃない……とか?
今から思えば、もっと早くそうすれば良かったのだと思う。
私はその日から、長男のポケットの中身をチェックしてから洗濯機に洗濯籠のものを投げ入れるようにしたのだった。手間はかかるが、その後のティッシュまみれを防ぎたいならばその方が遥かに面倒が少ないだろう。
「あ」
何日目かのチェックの時に、私はそれを発見することになる。長男のポケットの中に、薄い紙きれが入っていることに。
それは綺麗に折りたたまれた手紙のようなものであるらしかった。誰かから手紙を貰ったのだろうか、と私はそれを広げて見て――絶句することになる。
『死ね』
真っ赤な色で、その悪意の文字は踊っていた。
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