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祓魔官
それから、約8年の月日が流れていた。
今の日本の社会において、財力、権力と同等の概念の出現があった。
あの、警視庁怪奇課だった男が開いた、警察庁祓魔課と、霊力という、新たな概念の表出がそれだった。
1人、MP3プレイヤーのイヤホンを付けていた少年に、無線連絡があった。
「静也!そっちに行ったわよ?!」
「え?何でしたっけ?」
「ブリーフィング聞いてたの?!タイプ人化オーガ!そっちに向かってるわよ!もう5人殺してる!逮捕より祓魔を優先しろって、課長が言ってたでしょ?!」
「だったら、課長が動けばいいのに」
「あんたがいるから任せてんでしょ?!課長があんまり表舞台に立てない理由考えなさい!組織としての成長がないって、赤匪――朝日新聞がディスってんでしょ?!さっさとやんんなさい!霊視班がそっちに行くって、その通りだし!」
でも、赤匪って、一体。
了解。そう呟いて、彼は通りに顔を出した。
向こうから、筋骨逞しい男が走ってきていた。
既に、警察官その他を5人殺しているらしい。
止まれ!そう言う気にはならなかった。
止まれと言って、止まるようなら、この男はそうなっていない。
男の顔が、ますます凶悪な、鬼の顔に変わっていった。
タイプ人化オーガ。男の爪が、少年に伸びていった。
彼は、構わず男に対峙した。
鉄骨ですら切り裂きそうな爪が、少年の前で、ピタリと止まり、
容易に、その爪が、腕が細断されていった。
破壊が、腕から全身に広がり、男は、夜の闇に流れて消えていった。
「静也、どうしたの?」
いや、静也と呼ばれた少年は言った。
「いつものように。あの人の言葉通りに、斬穫したよ」
少年が羽織るジャケットは、誰もが憧れる、祓魔官のみが着られるブルージャケット。そして、
ある日に、男がくれた、左耳のピアスが揺れていた。
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