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羅吽
何かが、突如光忠を拐った。
擦り切れたオーバーを纏った、渋味のある顔立ちをしていた。
「貴方は?」
「羅吽という。光忠の親代わりをしている」
突如発した赤い光を、しかし羅吽は軽々と受け止めていた。
何者かが狙撃したようだが、羅吽には全く通じていなかった。
「温羅も酒吞も皇帝の奸計に屈した。バジリコックとて外つ国の妖魅。貴様等にこの国を憎む資格はあらじ。入鹿の無念は私が晴らそう」
身に纏う邪悪な霊気は、諌早祓魔官に匹敵していた。
「そうですか。羅吽さん、光忠をよろしくお願いします」
何故か、頭を下げた静也を、不可解そうに見つめ、羅吽は、一瞬で姿を消した。
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