19人が本棚に入れています
本棚に追加
その2
勘解由小路。これをどう思う?
軍用ヘリに乗った島原は、元相棒にこう言った。
「何というかあれだな、昨今の情勢を物語っているようだ。要するに、祓魔課で働きたいなら、とりあえずここに来いってことだ。どっちが柱か解った奴はうちに来いってことか。いや、実際かなり強引に構築したな。あの姫は」
真に霊感があれば、誰が見ても解る、高さ3メートルの鉄製の柱と、実際に空に伸びる天の御柱は、遠目で見てもかなりズレていた。
「霊視班以下、嘱託の陰陽師も、あれはあれで完成だという話だ。祓魔課としては、当分積丹半島は禁足地になるよう根回しが必要だな。準級祓魔官を派遣しなくてはな」
「そうだなあ。下手に弄らん方がいい。あれはあれで天才の類だ。百鬼姫のデビューとしては、まああれでいいのかも知らんな」
百鬼姫。百鬼を率いる器。
「結局、お前の娘のやんちゃで、日本が滅びかけた訳だ。勘解由小路、どう責任を取る?」
「ああまあ、真琴が莉里の尻をひっぱたいてくれたそうだ。母ちゃんとて、好きでやった訳じゃないし。まあ遺憾としか言いようがない」
相変わらずの無責任ぶりか。
「大体、お前等にだって責任はあるしな?危険な娘だから目を離すなって言ってあっただろうが。まあ、結果として祓魔課のイメージは上がったんだ文句なかろう。地龍だって、日本のレイラインで検索すれば幾らでも、な?今更だろうに」
まあいい。あんな幼児を責める訳にもいかない。
「それより、東雲光忠と、それを操っていた、羅吽という男だ」
それは放っとけ。勘解由小路はにべもなかった。
「俺に直接喧嘩売るような真似はせんだろう。来れば2秒で終わる。それだけの存在だ。それより、あいつは、自分を何だと思ってるんだろうな?入鹿の縁者を気取ってるってことは」
「そうか。蘇我氏。だな?」
「それもいずれ明らかになるさ。ああ、千歳で降ろせ。俺はこれから、真琴とアイスランドで仲良くシッポリするんだ」
軽々しく国外に出るなというのに。この国内最強祓魔官は。
島原は、釈然としなかった。
最初のコメントを投稿しよう!