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羅吽
そして、羅吽が走らせたSUVが、北の大地を南に向けて走り続けていた。
助手席で、意識を失った光忠が、あどけない寝顔を晒していた。
まだ若いが、いずれ育ては大いに働いてくれそうだ。
羅吽は、光忠を、完全に駒として考えていた。
日本は滅亡を逃れたか。
だが、まあそれもよし。
されど、既にこの国は末期。
長禄の変を越え、最早皇室は、その正当性すら定かではない。
帝よ。まもなく貴様を滅ぼさん。
我は、大化を生きし入鹿の傍系、赤兄。
土蜘蛛よ。我に呼応せよ。そして、百鬼千鬼の軍を組もうぞ。
羅吽、蘇我赤兄は、深い深い憎しみを胸に秘め、車をどこまでも走らせていった。
了
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