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警察庁祓魔課にて
東京都千代田区霞が関の合同庁舎に、警察庁祓魔課という、警察庁のオフィスよりも巨大で豪華な建物があった。
どっかの偉そうなおっさんが、「霞が関だと?そんなど真ん中のど真ん中に作ってどうするんだ?江戸時代から変わらん奴等だな。まあいい、いずれ青森とか離島とかに引っ越しだ」とか不吉なことを言っていたらしい。
まあいずれにせよ、ここは核の直撃にすら耐えられるという話で、ただそうなったら、議事堂も警視庁も防衛省も吹っ飛ぶことになる訳だが。
一応、便宜的にここは22階建て、地下5階まであるらしいのだが、その殆どが霊的遺物の保管庫になっていた。
まだ出来て数年の、新しいと言える部署だったので、人員の拡充は、それは貪欲に行われていた。
4階が準級祓魔官のオフィス。5階が霊視班のオフィスになっていて、紀子達が目指す課長は6階にいるはずが、秘書の女性に、課長は地下2階にいるわよ。と言われた。
秘書だけど、秘書なんだけれど、多分、あれトキさまの式神じゃ。
地下か。フラストレーション溜まってんのね。紀子は、改めて地下2階を目指していた。
地下2階は、準級祓魔官と、祓魔官の共同管理された、いわゆるがところの訓練施設になっていた。
建物が、無駄に広い理由って、それ?
準級祓魔官は、霊力はないが戦闘力が高い脳筋の集団で、殆どが自衛隊からの出向、たまに、SATからの出向者もいた。
あ、バレて敬礼された?いやまあ普通そうなんだけど。静也も気にしないし。
訓練施設は、極めて実戦訓練的な造りになっていた。
例えば、準急祓魔官が使う射撃場1つとっても、普通とは違っていた。
本来、マンシルエットが立てられているそこには、代わりに、呪符が貼られていた。
今日は、へえ怨霊系ね。クラスは、うえ?!道真クラス?!
射撃場に立っているのが、「史上最高の貧乏くじを引かされた男」島原雪次課長だった。
実質的な、警察庁祓魔課の長官職も兼務していて、今年も国会で、しょうもない野党にいびられていた。
「科学が全盛である昨今、貴方方は未だに方違えだの方位よけだのを、国民に強要するのですか?!それは完全に非科学的としか言い様がありません!」
下手にあのおっさんを立たせたりすると、「アホなのか?お前等は」とか返ってきそうだったが、島原課長は懇切丁寧に、今は失われた、あるいは顧みられなくなった、土着の宗教行事の重要性を説明することになった。
確かに、祓魔課がその存在を世に知らしめたのと同時に、空前の霊能ブームがまたまた起こっていた。
誰もが稗田礼二郎の妖怪ハンターや、うしろの百太郎を読み、季節になると施餓鬼米や破魔矢を買いまくり、世間から黒猫は消えたと思ったが実はいたり、まあ混合玉石の迷信のごった煮のようなブームが起きていた。
「我々祓魔課は、命を懸けて国民を霊的に守護するを目的とした組織です。祓魔課は、つまらない迷信やジンクスに駆り出されるような組織ではありません。そう、ジンクスなどあり得ません。そちらの党首が、黒猫を室内で飼い殺すようなことでは、我々は動きません。予算は1円単位で計上してあります」
ああ。黒猫は飼ってもいいが、横切らせたら通報されるって変な情報が出回って、党首の嫁がケージに入れて飼ってたって、あれ、おっさんの情報よね?
それが軽い騒ぎになって、国民に対する管理社会の到来だあ。って話になって終わり、あの時も、課長こうして訓練施設にこもってたのよね。
まあ、余計だったとは思うわよ?課長の答弁。
聞かれたこと以外、応えなくてもいいとは思ったが。
要するに、野党のゴミ共は、いざとなれば助けろって騒ぐくせに、基本的に、安全なとこから、祓魔課のあら探ししてるだけなんだから。
おっと、つい本音が。野党のゴミ共じゃない。ありがたい納税者であり、私達が守るべき国民の、行き着く先の可能性の姿なんだから。
じゃあ、野党が政権とったら、どうするの?
まあ、コッソリ党首、呪殺するかもね?
内部コンデンサーに放電が起き、どっかで自然発生した魑が、トキさまの霊力とおっさんの呪符によって、道真レベルになった怨霊が、課長に襲いかかってきた。
課長は、手に黒いものを持っていた。
軍用品を改良した、レーザーポインターだった。
課長は、霊力こそ凄いが、その照準に難があって、こうした器具に頼るようにしているらしかった。
恐ろしい霊気が、巨大な木気を発し、道真クラスを容易に貫いていった。
「課長。いつもながらお見事です」
静也が、おべっかを言った。
「いや、どうにもストレスがな。かといって、自宅では勝手に撃てん」
雷が鳴りまくる家を探すと、自動的に課長の家に着くって、嫌な話ね。
造物主譲りの雷の使い手、島原雪次課長は、軽い胃痛を発症していた。
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