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四谷にある暴力団事務所、東京閻羅会は、組員20名ほどの小規模な組織だったが、その歴史は幕末にまでさかのぼれるものだった。
初代鬼頭と呼ばれる男は、その鋼のような腕っぷしで幕末を生き延び、2代目鬼頭は、日露戦争を第三軍の兵卒として生き抜いていた。
関東大震災で、多くの民を救い守り続けたのだが、それでも社会的には博徒の親玉にすぎなかった。
そのまま、3代目になって、晩年の勘解由小路細の版図の末席にいたのがきっかけで、ある日、彼の元にそれは現れたのだった。
「お前が鬼頭か。莉里の子分になれ」
齢4つの幼子に対し、鬼頭は、素直に膝を折っていた。
東京閻羅会会長、鬼頭頼成は、莉里の顔を見るなりこう叫んでいた。
両手を大きく広げ、ヤクザのくせして孫にダダ甘なジジイでしかなかった。
「莉里様のおなりじゃああああああああああああああ!すぐに!おもてなしをしろおおおおおおおおおおおおおおおお!」
テーブルを埋め尽くすケーキやお菓子の山を前に、勘解由小路莉里は大儀そうにソファーにふんぞり返っていた。
その辺の所作は、どう見ても父親ソックリだった。
「鬼頭、最近の調子はどうなのよさ?」
足を組んで、莉里は言った。鬼頭は、莉里のパンツが気になって仕方なさそうだった。
へ、へいっ。鬼頭は顔を曇らせた。
「また、下のもんが殺られました。既に襲われた場所は30近くで。下手に抗争しようにも、相手は出鱈目に強いので手が出せません。しかも、目的は、何がしたいのか」
あーん。ショートケーキを頬張って、莉里は言った。
「解んないならしょうがないのよさ。ない頭捻ったって無駄なのよさ。まあ所詮人化オーガって、アレグランサの旧ザクなのよさ。で、場所は?」
「へ。富士の浅間神社でございました。今は茨城にいます」
「やっぱ、そうなのよさ」
「というより、連中は何故あんな真似を?吞気に山登ってましたぜ。地面に刺さった石ぶっ壊して何がしたいのか」
「受けた勉強が、2桁の足し算で終わってるあんたが気にすることじゃないのよさ。見つけたら闇雲に襲うだけなのよさ。ていう訳で静也。黙ってれば安全な位置にいられるとか思ってないで、さっさとやっつけに行くのよさ。莉里はここでケーキ食べてるのよさ。そのザッハトルテのホイップがけお代わり!ジャンジャン持ってくるのよさ!幼児に血糖値とか気にする必要ないのよさ!ほれ!あんた等さっさと行くのよさ!」
追い出された紀子達は、鬼頭の普通のベンツに乗って、人化オーガの祓魔に向かうことになった。
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