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「確かに家族ではないが……自分は彼女と一緒に住んでいました。同じ軍人のガールフレンドが入国できないなんて受け入れられない。彼女はギリギリまで戦ってここに逃げてきたんだ。正当な理由を説明しろ。でなければ然るべき手段に出るぞ」
ドルフィンの冷静な声が響いた。
彼が本当に冷静かどうかなんてさっぱりわからないが、その声は一種の清涼剤のように感じられた。
「お前、サイボーグか?」
「ああ。そうだが?」
所長は鼻で笑った。
「サイボーグがミラ・スターリングに惚れているのか? 身の程を弁えろ。これは検疫所の決まりなんだ、諦めろ。話は以上だ」
男はうるさそうに手をひらひらと振りながら腰を上げた。
なんてことを言うのだ。キャシーは怒りからサミーのドローンへ回していた手に力を込めた。
「身の程を弁えろとはどういう意味だ貴様! サイボーグへの侮辱と受け取るぞ!」
さっさと扉から出ようとした男の前に立ち塞がったのは、ローテーブルから飛び上がったホークアイのドローンだった。
いつでもどんな戦況でも、冷静に戦闘機のサポートをすると有名なホークアイが激昂している。キャシーは一瞬息をするのを忘れた。
どうしよう、どうなるんだ?
(ジェフ、どうするんだ?)
「サミー、二人はなんだって?」
突如耳に飛び込んだのはドルフィンの声だ。
「今すぐ入ると言っています」
キャシーの膝の上のサミーが淡々と言う。
「そうか、よくやってくれた。ホークアイ、礼を言う。なかなか時間稼ぎが上手いな。いいか? 所長だかなんだか知らんが、身の程を弁えなきゃならんのは貴様の方だ」
その時、扉が開いた。
そこによくメディアでも見る一人のアジア系女性と、もう一人、背の大きなアジア系男性がいた。
「龍先生! 京香さん!」
ジェフが弾かれたように立ち上がった。
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