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「みんな起きてこないですね……」
ミラはリュウに話しかけがてら紅茶を口に運んだ。もう八時近いが屋敷はとても静かだ。
二人はリビングのソファに移動していた。
「僕が撤退した後もしばらく起きてたみたいだし、みんな疲れてるだろうから昼過ぎまで起きてこないだろうなぁ。零はショートスリーパーだからそろそろ起きてきてもおかしくないけど、あの子も多分仮想現実空間でどんちゃんしてただろうし、起きてきてもまぁうちの娘の会社に呼び出されそうだし……今日はゆっくり過ごそうか」
「はい!」
リュウは紅茶にミルクを加えながら言った。二杯目は味を変えるようだ。ミラのカップにも紅茶を注いでくれたので、ミラも二杯目はミルクティーにしていただくことにする。
「ところで首は大丈夫?」
「昨日より全然いいです」
「それはよかった。今日僕は終日オフなんだ。鳥の世話とか庭いじりとかするから、よかったら鳥のご飯あげたり放鳥の時に一緒に遊んであげてほしい」
「はい、お手伝いとかできることあればなんでも!」
そう言うとリュウは苦笑して言った。
「今作業とかしたら首に良くないから、楽しいことだけすればいいよ。マウス大丈夫ならシロフクロウにご飯あげて、インコ手に乗せておやつあげてゆっくりしてほしい」
そんなわけにはいくまい、とミラは思った。
これほどいい環境で過ごさせてもらっている。通常なら、避難所で衝立越しに雑魚寝するかテントで寝て炊き出しに頼るしかないのだ。
自分は避難民である。
「ですが、ここまでいい環境で過ごさせていただいて……」
「それを言ったら、君は零の恩人だろ? 気にしないでくれ。サミーやジェフ君から聞いてる。出火した零の着陸をサポートしてくれたのは君だ。本当に感謝してる」
「それは……」
艦内航行でレイの機体から火災が起こった時のことだろう。あの時は必死だった。自分はするべきことをしただけである。
「僚機を生きて帰還させることは軍人として当たり前のことですから」
ミラは目を伏せ謙遜気味に言った。
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