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「鳥類研究所の?」
「うん、本業は医学博士で、専門は遺伝子工学なんだけどね。鳥は趣味」
ミラはリュウに間抜け面をさらす羽目になった。
「だから驚いたんだ。まさか零と君がねぇってさ。あ、零が起きてきたら自慢しようっと。僕は零より先にミラと出会ってるんだって。あいつきっと怒るぞ〜」
そう言ったリュウは楽しそうに笑って食器を片付け始めた。
ミラは慌てて自分の使い終わった食器を持って後を追った。
「ここに置いてくれればいいよ。あとはハウスキーパーに頼もうか」
「はい……あの、」
ミラはリュウの顔を見上げた。
「うん?」
「お会いしてたんですね。すみませんすっかり忘れてて、言われて思い出しました」
その言葉だけはずっと頭の片隅にこびりついていた。あまりにも印象的だったからだ。
でも誰から言われたかはさっぱり覚えていなかった。そういえばこんな顔だっただろうか。そこまで思い出せない。
「そりゃあそうだ、あれだけ知らない人に囲まれて僕はその一人。思い出すだけすごいよ」
そう言った彼はドアのほうをちらりと見た。
「本当にみんな起きてこないなぁ、インコ連れてきちゃおうか?」
「インコちゃんですか!?」
「うん、そうだセキセイインコ連れてこよう!」
そう言ったリュウはミラに「庭のニワトリでも見て待ってて!」と告げてどこかに消えた。
ミラは言われた通りに窓の外に目を向けた。
(テバちゃん、かわいい……)
茶色いニワトリたちが地面を掘り返してつついていた。しゃがみ込んで日光浴しているニワトリもいた。一番近くにいるのは先ほどミラが抱き上げたオンドリだ。赤い立派なとさかに尻尾の先だけが黒い。
名前は「テバサキ」というらしい。リュウが「テバちゃん」と呼んでいたのでミラもそう呼ぶことにしたのだ。
未だ「テバサキ」の意味を知らないミラは、朝日にきらめく庭を闊歩するニワトリたちをにこにこと見守っていた。
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