6人が本棚に入れています
本棚に追加
零も人のことを言える立場ではなかった。ミラの好物のレモンウォーターを飲んで一人感動に打ち震えていたからである。
続いて彼は念の為寝室に足を向ける。カナリアはいなかった。彼女はきちんとログアウトして寝たようだ。
「まあいい、片付けは後にするか……」
リビングには昨夜の残骸が残っているが、ごそごそ片付けを始めたらホークアイの安眠の妨げになるだろう。
ソファで寝ている男は放置することにした。ここは仮想現実空間だ。ソファで寝ていたからといって首を寝違えることもないし、背中を痛めることもない。
(寝過ぎたな……)
気づけば九時近い。唐突にミラのことが気になった零は仮想現実空間からログアウトしてドローンに視覚と聴覚を接続した。
ドローンはリビングのサイドボードの上にあった。視覚がつながると、まず飛び込んできたのはリビングのソファの上のミラだった。
ローテーブルの一角には鳥用のアスレチックがあった。止まり木や梯子、ブランコや鏡などで構成されたそれは、インコやオウムの遊び場だ。菜さしには豆苗と小松菜が刺さっている。
空いたスペースには、おもちゃであるプラスチックのボールや噛んで遊ぶための紙コップ、皿には水浴び用の水が張ってある。インコ用のクッキーもある。
そして、ミラの指には黄色のインコがいた。
(ルチノーのセキセイか)
「レモちゃん、飛べないのか。私も鳥だけど飛行機乗らなきゃ飛べないんだ。一緒だね!」
ミラがセキセイインコに話しかけている。
(かわいすぎるだろ!)
これはいい、天国だ。
ミラがインコと一緒に遊んでいる。
よく見ると、インコは右の肩が少し落ちていて翼の先を引きずっていた。なるほど、彼女の言う通りで飛べないのだろう。
最初のコメントを投稿しよう!