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「……その子、飛べないんだろ?」
「うん、悪質ブリーダーからレスキューされたんだって。骨折放置されちゃったみたいでもう飛べないらしい」
「そっか、なら手タクシーで色々運んであげるといい。おやつでコミュニケーションとると仲良くなれるよ。そのクッキーもそうだし、あとは果物あたりかな」
「みかんとか? さっき庭でニワトリ抱っこさせてもらったんだけど、みかんあげたよ。楽しかった」
「うん、インコにもみかんとかりんごはいいおやつだよ。へぇ……あ、あそこにいるニワトリか」
窓の外には茶色いニワトリが歩き回ってるのが見える。名古屋コーチンだろう。
「あの雄、立派だなぁ。体格がいい。足も鶏冠も血色がいいな」
「テバちゃん、思ったより大人しくてかわいかった。あ、テバサキって言うんだって」
零は耳を疑った。いや、マイクで拾った音を疑った。
(テバサキ!? って手羽先ってことだよな?)
「じいちゃんが言ってた? 手羽先?」
「うん、リュウさんがそう言ってた」
(名付けがサイコパスすぎるだろじいちゃん!)
零は迷った。手羽先の意味を伝えるか否か迷いに迷った。
「ミラ、あのな、手羽先ってな……」
「うん」
ミラは手元に寄ってきたレモンを手のひらに乗せて頭を指先で撫でてやっていた。レモンは気持ちよさそうに目を閉じている。実にいい子である。
零は意を決して音声を発した。
「チキンウィングって意味だぞ」
ミラの動作が停止した。
途端に、撫でる手を止めるな、とでも言うようにレモンはミラの指をガブガブ齧っている。
「……え?」
「手羽先ってのは日本語でチキンウィングって意味。じいちゃん本当に……前もせせりだのぼんじりだの文鳥につけてたし……文鳥はともかくニワトリだぞニワトリ!」
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