19. 東方重工 総裁室

3/5
3人が本棚に入れています
本棚に追加
/84ページ
「昨日帰ってきてないだろ、大丈夫か?」 「今頑張らなくてどうするの。あ、心配しないで、ちゃんと寝てるし秘書は帰してるから!」  京香はピースサインしてきた。やれやれ、と零は内心ため息を吐いた。  京香が紹介してきたのはセミ・サイボーグの男だ。  会ってすぐわかったが、その男は喉元が機械に覆われていた。  病気で声帯を失ったらしい。彼と話してすぐに零は決めた。その声があまりにも自然だったからだ。  「試させてくれ」 「もちろん。じゃあリハビリすることになるけど、まずは工事ね。そんな難しいものじゃないけど一日はもらうわね」 「よろしく。あ、ついでに健康診断してくれる? 今月健康診断しなきゃなんだけど。確かカナリアも今月って言ってた!」 「わかったわ。話通しておくわ。うちにもフル・サイボーグの社員がいるからなんとかなると思う。ジェフ君に話しとけばいいのかしらね?」  カナリアの担当医は別の軍医だったが、その上官がジェフだ。おそらくカナリアのことも頭に入っているはず。 「そうだな、ジェフなら把握してると思う」 「OK、任せなさい」  それから零は祖父が言っていたステーキパーティの話をしてさっさと本社ビルから撤退した。 「俺はこれからその辺の店とか銀座通りちょっと見て回るが、矢島、別に俺に付き合わなくてもいいぞ、荷物もないしな」 「そういうわけには参りません」 「でもドローンだぞ。別にこれに危害を加えられても何か損害があるわけじゃあない。行きは荷物を持っていたが帰りはないしなぁ」  零は少しばかりその辺りを散歩したかったのだ。  矢島は困ったようにこちらを見てきた。昔から付き合いのある男で、かつてはSPだったらしい。見た目は若く見えてももう50過ぎ。子供の頃からよく知っている。 「うーん、お前も仕事だから困るか。なら買い物したら荷物持ちしてくれ」 「かしこまりました」
/84ページ

最初のコメントを投稿しよう!