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「昨日帰ってきてないだろ、大丈夫か?」
「今頑張らなくてどうするの。あ、心配しないで、ちゃんと寝てるし秘書は帰してるから!」
京香はピースサインしてきた。やれやれ、と零は内心ため息を吐いた。
京香が紹介してきたのはセミ・サイボーグの男だ。
会ってすぐわかったが、その男は喉元が機械に覆われていた。
病気で声帯を失ったらしい。彼と話してすぐに零は決めた。その声があまりにも自然だったからだ。
「試させてくれ」
「もちろん。じゃあリハビリすることになるけど、まずは工事ね。そんな難しいものじゃないけど一日はもらうわね」
「よろしく。あ、ついでに健康診断してくれる? 今月健康診断しなきゃなんだけど。確かカナリアも今月って言ってた!」
「わかったわ。話通しておくわ。うちにもフル・サイボーグの社員がいるからなんとかなると思う。ジェフ君に話しとけばいいのかしらね?」
カナリアの担当医は別の軍医だったが、その上官がジェフだ。おそらくカナリアのことも頭に入っているはず。
「そうだな、ジェフなら把握してると思う」
「OK、任せなさい」
それから零は祖父が言っていたステーキパーティの話をしてさっさと本社ビルから撤退した。
「俺はこれからその辺の店とか銀座通りちょっと見て回るが、矢島、別に俺に付き合わなくてもいいぞ、荷物もないしな」
「そういうわけには参りません」
「でもドローンだぞ。別にこれに危害を加えられても何か損害があるわけじゃあない。行きは荷物を持っていたが帰りはないしなぁ」
零は少しばかりその辺りを散歩したかったのだ。
矢島は困ったようにこちらを見てきた。昔から付き合いのある男で、かつてはSPだったらしい。見た目は若く見えてももう50過ぎ。子供の頃からよく知っている。
「うーん、お前も仕事だから困るか。なら買い物したら荷物持ちしてくれ」
「かしこまりました」
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