第二章 1. 朝倉邸 クリムゾンとスミルノフ

2/3
前へ
/175ページ
次へ
「ようこそ……すみません、安否の連絡もせず」 「あー構わない、気にするなドルフィン。フローが教えてくれたからな。よかった、俺の部下も家族友人も全員無事だった。正直少し休みたい気分だ。ま、ブラボーⅠとⅡで新統合軍を樹立してゼノンに立ち向かうとか言ってるから、休暇も数日で終わるだろうがな」  スミルノフはティーカップを口に運ぶ。 「なあ零。ラプターが撃墜されたって言うじゃないか。それにかなり驚いたが……キャシーから聞いたぞ。お前がラプターを拾って連れ帰ってきたって? おぼっちゃまのくせにやるときゃやるなぁおい!」  クリムゾンはずいと身を乗り出してきた。 (近い近い! あんたもガラに似合わずおぼっちゃま育ちだろうが!)  しばし逡巡し、零はスピーカーをオンにした。 「いざとなったらそれくらいの根性見せられないと、ミラレベルには振られます」  意味不明なことを言われた零は自分でも自分で何を言っているが全く分からない謎のコメントをしてしまった。発言してから彼自身も思ったのだ。俺は何を言っているのだろう、と。 「……ドルフィン、なんかテンション変だな。疲れてるんじゃないか? 重工で面倒な話でも?」  キャシーが気遣うようにこちらに視線を寄越してきた。 「いいや、そういうわけじゃないけど……」  ミラとあの男はどんな関係なんだろう。いや、別に再会のハグくらいは誰とだってするだろう。ミラを信じていないわけではない。  でも、あの男はおそらく幼馴染か何かで、自分ができないことをいとも簡単にしてのけるのだ。今頃だって零が逆立ちしてもできない「カフェで一緒にコーヒーを飲む」ということをしているに違いない。 (別にミラがジェフと茶を飲みに行っても全然気にしないのにな……) 
/175ページ

最初のコメントを投稿しよう!

6人が本棚に入れています
本棚に追加