3. 検疫 ミラと朝倉京香

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「首、痛いな」  ミラは、体温を測って別室送りになったのち、感染症の検査をすると言われて口の中の粘膜やら採血をし、この部屋に放り込まれた。  ご丁寧に外から鍵までかけられてしまった。  そこはただの会議室のようだった。長方形の部屋だ。ローテーブルがあり、三人で座れるくらいのソファが並んでいる。  今や首だけでなく、肩も痛かった。若干吐き気もする。 「首やったんだな……」  脱出の時にかなりの衝撃を後ろから食らったのだ。自動車を運転中に追突されたのと何も変わらない。  むちうちは後から痛くなると聞いたことがある。きっとそれだ。  そりゃそうだなと彼女自身も変なところで腑に落ちた。だが、手も足もついているし、他におかしなところはない。運が良かったと言わざるを得ないだろう。  ミラはソファの座面にそろそろと横になった。 (レイ、検査終わったかな……)  彼はミラと引き離されることをかなり嫌がっていた。だが、サイボーグと健常者は流石に検査項目も違うし、流石に折れて大人しく係員の指示に従っていた。  別れ際、彼のカメラが名残惜しそうにこちらを見ているのがわかって、なんだかかわいく思えたのは秘密である。  ミラは目を閉じた。普段の自分だったらとっくに腹の虫が喚きたてているところであるが、とても静かだ。  こんなに体調が悪いのは久しぶりだ。  ミラは目を閉じた。ちょっと気持ちが悪いが、目を開けているよりはいい。  しばらく後のことである、ミラは鍵が開いた音で目が覚めた。どうやら眠っていたようだ。 「ううん……?」  身体を起こそうとしたが、首も背中も痛みが走った。 (しまった、悪化してる……)  ドアが開いた瞬間にレイのドローンが一目散に飛んできた。  ソファに横たわっているミラを見て、彼が血相を変えたことに気づいた。  顔色や声でわかるわけではない。でも彼女にはわかったのだ。 「ミラ! ごめんな。一人にするんじゃなかった……どうした? どこが悪い?」  彼はこちらの調子が悪いことを察しているようであった。 「ちょっと調子悪くて、身体も痛い……首とか背中とか」  ミラは眉尻を下げ、上体をなんとか起こした。
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