6人が本棚に入れています
本棚に追加
「見かけたならば素直に話しかけていればよかろう。なぜ変なところで遠慮した?」
ホークアイは流れるようにボトルを置いて、涼やかに言ってのけた。
零は明後日の方向に向きかけた思考回路を昼間のできごとに戻した。
「旧友との再会だ。邪魔したくはなかった」
「だからと言ってなぁ……」
ホークアイはやれやれと息を吐いて、生ハムを口に運んだ。そして目の色を変えた。
「これ。美味しいな」
つづけて、ワインに口をつけた。
「ちゃんとハモンセラーノっぽい濃厚なコクに硬めの食感。食べ応えがあって美味しい。確かにこれは美味しいがそんなことは今どうでもよくて!」
零は今度はホークアイのグラスにワインを注いだ。
「酒と旨いつまみがあると他のことなんてどうでもよくなるな。なるほど、皆フィンガーフードをつまみながら酒を飲み交わすわけだ。君は今度ラプターと二人でモニターで繋いで酒でも飲みながら話でもするといい」
意味深かな笑みを浮かべながら頬杖をつき、ホークアイはどこか蠱惑的な視線を零に向けた。
「ほら、カウンターに肘をつくな、行儀が悪いぞ。まあ、確かに二人で飲むのもいいかもしれんな」
零が軽く嗜めると、ホークアイは素直に従った。
「せっかくだから同じ軽食と酒を揃えて、な」
「そうだな、それはいいかもしれない」
「経緯はどうであれ、今こうして飲食できることが私は嬉しい。君からすればまだまだ中途半端かもしれないがな……向こうにいる間に食べてみたかったな、トルコ料理」
「いつかそのうち、きっとこっちでもトルコ料理のフルコースが食べられるようになる」
もうすぐ12月。ソックスの誕生日だ。
(本当は、実際のカラ・デニズの……ソックスの親父さんの料理をソックスと一緒に囲んで食べられたらよかったんだが……)
最初のコメントを投稿しよう!