3. 繁華街 懐かしのタバコ

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「私はホークアイ。機体はE1 オクルス。フローリアン・ミュラー少佐だ」 「機体はケーニッヒ。タックネームはドルフィン、階級は大尉」  下手すればドルフィンと言っただけでも正体が露見しかねないが、多分彼女は自分を知らない。中尉ならどれだけ若くても二十代半ばだろう。きっと知らないはずだ。 (ケーニッヒって言ったのも、もしかしてまずかったか?) 「二人ともサイボーグシップ!? しかも、オクルスとケーニッヒ……なんてエリート! ブラボーⅡには戦闘機のサイボーグシップがいるんですね!?」  彼女が息を飲んだことがわかった。右手に持ったタバコのやけに長くなった灰が今にも落ちそうで、それがやけにリアルさをそそる。 (バレたか?) 「階級としてはまぁ……妥当な年齢だ。この前33歳になった。こっちは35だから……」  自分はともかく、ホークアイは全く妥当な年齢ではない、という言葉を零は飲み込み口を開き、俺をジジイ扱いするなよとホークアイを睨みつけた。 「君はまだ階級からして二十代半ばだな? 逃げて来てからサイボーグシップには初めて会った。俺は元々こちら出身だが……爆発的に人口が増えたようだな」 「そんな方だとは知らずご無礼を。娯楽も増えて皆感謝していますよ。お二人もせっかくだから遊んで行ったらどうですか? あっちのカブキチョウの方とか……お酒でもショーでもちょっとアブノーマルな店でもなんでもござれ」 (懐かしいなぁ歌舞伎町か。でもそんな繁華街で遊ぶ気はないな……)  酒場は無限と言っていいほど。ピンからキリまで揃うラブホテル。キャバクラもガールズバーも、ホストクラブもストリップショーもその他風俗店なんかもなんでもあり。リアルのブラボーⅠの歌舞伎町ストリートを元に作ってあれば、の話であるが。  ブラボーⅠの歌舞伎町ストリートは地球の東京にある本物の歌舞伎町より猥雑とした繁華街として有名である。 「まあおいおい、気が向いたらな」  ホークアイはさらりとそう流した。一方の零はホロを見上げた。マツヤマは地球から脱出した可能性もあり……とキャスターが原稿を読み上げている。ホロには監視カメラの様子が映っていた。どうやら職員に紛れて脱獄したらしい。手引きでもいたのだろうか。 「ブラボーⅠはあいつらに酷い目に遭わされました。だから援助してくれたブラボーⅡの皆さんには感謝してます。今度はあたしたちの番。しばらくはゆっくりしてくださいね。これ、お詫びです」 彼女はタバコの火を消して、「すみません、御無礼を失礼しました」そう笑いながらパッケージの開いた口を向けてタバコを差し出してきた。 「……せっかくだからいただこう」
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