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「無理しなくていい、横になってろ」
レイはそう言うと、身を翻して入り口に飛んで戻る。そこには職員と思しき男がいた。
「お前ミラに何しやがった!」
「返答次第ではただでは済まさんぞ!」
レイのドローンの隣にいたのはブラックのドローン。ホークアイだ。
「いえ、こちらは何も!」
ドローン二機に詰め寄られて焦ったような男性職員の声と、二人の剣幕にミラはパチクリと目を瞬かせた。
「大丈夫、私は何も……!」
慌ててソファから立って彼らの方に向かう。
「ラプター、君は座っていろ。緊急脱出したのだろう? 然るべき医療機関で検査しなくては!」
ホークアイの声の調子に驚かされる。なんだ? 何がどうなっている?
「みんなブンブン飛んで行っちゃって速いわよ……スニーカーでも履いてくるんだったわ」
一人の女性が部屋に入ってきた。後ろにはもう一人見覚えのないアジア系の男性と、ジェフやカナリアのドローン、キャシーとフィリップが続いているが、ミラの視線を釘付けにしたのは先頭の女性だった。
(総裁だ……レイのお母さまだ)
ミラは慌てて身を起こした。
確かにレイの顔立ちには彼女の面影がある。整った顔立ちに意志の強そうな眉。ヒールを履いているので自分よりも身長が大きい。
今、頑張らなくてはならない時だ。ミラはそう考えた。
利き手のグローブを外した。彼女の立場なら、きっと拒否はしないだろう。
ミラは緊張を隠せずに彼女を見上げた。
「初めまして。ミラ・スターリングです」
初対面の人間にこの手を見せるなんて、本当に久しぶりだ。
「あら、話は聞いているわ。うちの息子が世話になっているようね。キョウカと呼んで」
キョウカは妖艶な笑みを浮かべ、こちらの手を躊躇なく握ってきた。
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