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「「サミー! おかえり」」
二人の声が揃う。
「ただいま帰りました。あれ、ホークアイとドルフィンはいないんですね」
「多分あっちで遊んでるんじゃないかってさっきミラと話してた」
「はぁ、まあブラボーⅠの仮想現実空間、とんでもない繁華街があるみたいですからねぇ。ホークアイと色々見物してるんでしょう」
(夜の店とかもあったりするのかな……)
それはそれで、ミラも思うところがあった。彼女は仮想現実空間でのレイの交友関係を縛るつもりは全くないし、多少遊んでもそれはそれで仕方ないと思うしかないと思っていた。
あれだけ自分と付き合うことに消極的だったあの男を縛り付けているのは自分なのだ。
(このクラスのお家柄の健康だった成人男性が今まで遊んでないわけがない……)
ハイソサエティな人間も楽しめるクラブやラウンジがあれば、そう、気分転換になる程度なら遊んでほしい。それ以上に誰かと関係を持つなど本当は嫌だが、ストレス解消になるのならば自分が気づかないように配慮して遊んでくれたらいい。こればかりは全部自分が悪いのだ。
仮想現実空間に共に有れない自分が全て悪い。
だが、サミーが変な正義感で自分に報告したり、彼を非難したりしたらどうしよう。
「サミーも帰ってきたことだし、私も部屋に帰るかなぁ? まだ寝るわけじゃないけど。寝る前にシャワーも浴びたいし」
「部屋に戻るなら、一緒に行っていいですか? 少々話したいことが」
「愚痴ならいくらでも聞くぞ」
「ありがとうございます。 ラプター、顔色が良くないですけど大丈夫ですか? あの、松山が逃げ出したって……」
キャシーの方を見てホバリングしていたサミーのドローンがこちらを見た。ミラの思考が現実に引き戻された。
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