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メン地下アイドルの実体
新宿の繫華街を歩くと、チカチカしたけばけばしいプラカードを掲げたいろんな勧誘を見ることが出来る。
「ライブ無料でーす!」
「メンズ地下アイドルと出会いませんか?」
「君だけの推しを見つけて会いに行こう!」
彼らは、メンズ地下アイドルによるライブを紹介している。
プラカードを上げてチラシを配っているのもメン地下らしく、若い女の子たちが群がっている。
九十九夢月というメンズ地下アイドルに出会い、ミイチャムが心のどこかで引っかかっていたヨシタカは、今まで何も考えずに通り過ぎていたそれらが今日はとても気になった。
メンズ地下アイドルは、街中やSNSを通じて宣伝・集客していて、九十九夢月が所属するグループも判明している。
キャッツナイトプリンス。
現在のメンバーは5名。
全員が王子様キャラをコンセプトにしていて、ファンのことをプリンセスと呼んでいる。
(SNSの予告によると、この辺りでライブをやっているはずだ)
一度、どんなライブ活動をしているのか乗り込んで見てやろうと考えていた。
しばらくウロウロすると、『キャッツナイトプリンス・ライブ会場』と書かれた小さな看板を置いた古いビルを見つけた。
ヨシタカが入ろうとすると、受付で止められた。
「男性はお断りしています」
「ダメなんですか?」
「申し訳ございません。こちらはプリンセスオンリーとなっております」
「分かりました」
ヨシタカは、一旦大人しく引き下がることにした。
「男は入れないのか。どうしようかな?」
近くのアパレルショップが目についた。
「いらっしゃいませ!」
店に入ると、新宿の店員は男性が入ってきても慣れていて動じない。笑顔を崩さず接客してきた。
ヨシタカは、いくつか手に取ってサイズを確認すると、試着室に入った。
思いっきり腰を締め上げて、胸を大きく見せたセクシーな服を選んだ。
スカート丈も、初めて穿くような短さである。
「まあまあかな」
着たまま出てくると、近くの客は、入った時は男性だったのに出てきた時には女性だったので、目を白黒させてパチパチと激しく瞬きした。
「失礼します」
店員がヨシタカの肩と服の位置を確認する。
「お客様、サイズがピッタリです」
「気に入りました。これ下さい。このまま着ていきます」
「ありがとうございます」
上から下まで一式購入すると、店を出て先ほど断られた受付に行った。
今度は追い出されなかった。
「いらっしゃいま、せ?」
ヨシタカを見て、不思議そうな顔をしているので吹き出しそうになった。
中に入ると、料金表が壁に貼られていたので眺めた。
「たっか!」
メン地下ライブは基本的に無料である。
では、どこでお金を使わせるかというと、チェキ、握手会、グッズ販売などだ。
これらは、女性アイドルでもあるので馴染みがある。
メン地下特有のサービス。それは、デート、食事、旅行があることだ。
これがとんでもなく高額だった。
2時間デート、500コイン。食事付デート、800コイン。6時間まで一緒に外出、1000コイン。二人で日帰り旅行、8時間2000コイン。
『本日のレート、1コイン=1000円』とまで書いてある。日によって上下するのだろうか?
「1コイン1000円だとしたら、日帰り旅行は、200万円⁉」
衝撃を受けた。
メンズ地下アイドルに嵌ると、とてつもなくお金が必要となりそうだ。
「ミイチャムの借金が嵩んだ原因は、もしかしてこれのせい?」
二人は本当の恋人同士だったのだろうか?
だんだんと、二人の間にある闇が見えてきた。
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