レイリーンの記憶

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 式典は厳かな雰囲気の中で行われた。鎮魂の鐘の音とともに、犠牲者を偲ぶ慰霊碑に黙祷を捧げる。  失われた命は取り返せないけれど、せめてどうか安らかに。目を開けて見上げると、澄み切った真っ青な空が広がっていた。 「お祈りは済んだかい、レイリーン」  ロイスがわたしの肩に手を置いた。 「うん。お父さんたちは今頃、向こうを旅しているんだろうね」 「僕たちも世界を見て回ろう。助けが必要な人たちがいるはずだ」  わたしは話者(トーカー)の力を授かって生まれてきた。それは、多くの人たちに手を差し伸べるためだと思っている。 「さて、今日の宿を探しながら、街の散策といこうか」 「うん。わたし、星見の険に行きたいんだよね」 「まさか、あんなのに登るとか言わないだろうな」  ロイスとともに大通りを歩く。その行く先にぼんやりと見えているのが、レイグランス山。世界で最も高く、そして星空に最も近い場所だ。 「当然でしょ。星空がわたしたちを呼ぶ声が聞こえない?」 「全く聞こえないよ」  ロイスはため息を付くと、苦笑した。 「君には魔法があるだろうけど、僕はこの足で登るんだろ」 「大丈夫だって。疲れ知らずのロイスなら楽勝でしょ」 「人を化け物みたいに言わないでくれるか」 「しっかり準備して、明日の朝出発しよう。楽しみだねえ」  ここまで来て、世界一の星空を見ないわけにはいかないのだ。ロイスがもうひとつため息をついたが、聞こえないフリをした。
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