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交差点で待っていたのは、もちろん聡さんだ。
「律、すごく綺麗」
タクシーのドアが開くと、私を見た聡さんは、満面の笑みを浮かべた。
「ありがとうございます。聡さんも」
すごく素敵だ。
いつもと違って光沢感のあるダークスーツのスリーピース。ワイシャツはごく淡い水色、ネクタイはシルバー。髪は普段と仕事の中間で、やや無造作なアップスタイル。
車は公園沿いを走り、官庁街を抜け、溜池山王へ。車窓を東京の景色が流れていく。
「おもしろいです」
「ん?」
「いつも地下鉄を使うから、私にとって東京の街って、点と点で結ばれてる感じなんです。でもこうして地上を走ると、線でつながって」
「なるほど――運転手さん、少し遠回りしてもらっていいですか」
「はい。どのようなルートで?」
「六本木通りを曲がって、国立新美術館から青山墓地に入ってください」
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