1. ハロウィンの悲劇

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1. ハロウィンの悲劇

 突如として果音は地獄の底に突き落とされた。  何故こんな事になったのかまるで理解が追いつかない。この日はただ友人とハロウィンイベントに参加しただけだった。それなのに何故か知らない場所にいて、今は命の危機に晒されるという最大の危機に陥っている。  果音に向けられているのは鈍く光る剣の先と、そこにいる人々の嫌悪の視線、そして酷い罵詈雑言。一方、一緒にいる友人、桃香に対しては「聖女様!」と歓喜する声が上がるのだった。この状況に桃香は果音を助ける訳でもなく、ただ薄ら笑いを浮かべている。そして恐怖で声も出ない果音の耳元で桃香はそっと囁いた。 「実は私、昔からアンタが大っ嫌いだったの。やっと私が主役になれるわ。アンタなんてどこかで野垂れ死ねばいいのよ」  突然の友人の裏切りと絶望的な状況に果音はガクリと膝をついた。    ◇◇◇ 三好果音(みよしかのん)白鷺桃香(しらさぎももか)は幼馴染だった。家が隣で親同士も仲が良く、果音が大学生になった今も家族ぐるみの付き合いをしている。同い年だが少し幼い所のある桃香に度々手を焼きながら、それでも果音は桃香と仲良くやってきた。  そしてこの日はハロウィンだった。家で課題をするつもりが、急に桃香がやって来て勝手に予定を入れられてしまった。なんでも、桃香は街で開催されるハロウィンイベントにどうしても参加したいらしく、果音は無理やり連れ出された。正直、果音はあまり気分が乗らなかった。というのも、桃香がこういう風にニヤニヤしながら連れ出す時はいつも何か自分にとって良くないことが起きるのだ。  案の定、イベント会場に隣接するドレッシングルームで果音は魔女のコスプレをさせられた。しかも特殊メイク用のシールも顔面に貼られてしまい、魔女でもあり口裂け女でもあるような、おぞましい姿となっている。一方の桃香は可憐な天使のコスプレをして、可愛さをアピールするのだった。
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