13.夏鳥の泣声は儚くて

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 近い内に聞かされる事になるであろう娘の告白を知り、課長さんは頭を抱え込んだ。 「だ、大丈夫ですか?」 「あ〜、いやぁ、正直複雑だよ。けど、教えてもらって良かった。もう腹をくくれってね……ちゃんと、(あかり)と話し合ってみるよ。ありがとう」  ほとほと困っている様子で笑顔は引きつっていたけれど、課長さんの瞳は明るい未来を見透しているようだった。  そして……私を見て、まるで私の未来も確かめるみたいに問いかける。 「……冬咲(ふゆさき)さんは? もう大丈夫?」 「私? ……はい。運命(さだめ)に逆らわず、生きていこうと思います」  今日、ナツユキカズラに出逢えたように。  いつかまた、何処かで――――――  初雪の花びらにささやかな想いをこめて、きらめく夏の青空に見送った。 *  心を揺らした夏が終わり、秋が深まって木枯らしが吹いた頃。  明さんが課長さんと莉花ちゃんと、一緒に暮らし始めたと報告を受けた。 『籍はね……ずっと、入れるつもりはないの。孝之とも納得して決めた事で、つまりは――――ずっと、恋人でいようねって///』  幸せのカタチ。  3人で作り上げたんだなぁ……  じーんと胸が温かく、私までとてもハッピーな気持ちになった。  そして、あっという間に冬はやって来て、強い寒気が都心を凍えさせている。  ホワイトクリスマスも期待されたが、山沿いだけに薄っすらと白色のベールがかかったそうだ。  それからさらに寒さは厳しくなり年末を目前にして……  また関東に雪の予報が出された。都心でも初雪の可能性があるという。  私の心はそわそわと冬空ばかり気になっていた――――
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