偽ギャルDays

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このような歪な学校生活は高校へ入学した4月から始まる。 「小百合、制服姿めっちゃ似合うー!」 「本当ー? 吹奈もそのリボンどこで買ったの!? めっちゃお洒落なんだけどー!」 小百合と吹奈は中学校が一緒だった。 中学生の時から仲のよかった二人は一緒の高校を受験し合格した。 そして、場所は変わっても今まで通りの日常が続いていくと思っていた。 「今度一緒に買いにいこうよ! 本当にこの学校は自由にお洒落ができるからいいよねー」 「他は校則が厳しいからねー。 無事合格できてよかった!」 元々派手な格好を好みお洒落が好きだった二人。 制服が自由だということでこの学校を選んだ。 「あ・・・」 正門をくぐるとたくさんの人だかりが見える。 新一年生で昇降口の前が混雑しているのは自分のクラス分けを見るためだろう。 しかし小百合は違うところへ目がいっていた。 ―――・・・あの人、カッコ良い。 目に留まったのは外でバスケットボールを持っている金髪で背が高い男子。 新入生ではないため先輩になるのだろう。 朝の部活中だったのか体育館へと入っていったが、彼の後ろ姿が見えなくなるまで目を離せなかった。 「小百合? どうかしたの?」 「・・・え? ううん、何も」 急に呼ばれ慌てて視線をそらす。 ―――久しぶりだ、この感覚。 小百合の一目惚れだったが吹奈には言わずにいた。 そして現在は吹奈の彼氏となっている。 完全な三角関係である。 いや、二人が付き合ったその日小百合の恋愛は砕け散ったのだ。 ただこの時の小百合はそのようなことを知る由もなく、ただ新しい生活に心を弾ませていた。 「あのー!」 そんな時突然声をかけられた。 「・・・はい?」 「よかったらウチら友達になんない?」 視線を向けると小百合たちよりも超ド派手な二人がいた。 これが茉耶と千尋だ。 校則がどうなっているのか分からないが化粧はバッチリで服装も原宿にでもいそうな格好。 完全にギャルといった状態で自分たちとはレベルの違いを感じた。 その勢いもあり吹奈も明らかに困っている様子だった。 とはいえ新しい友達ができることを歓迎しないはずもなく、小百合は先輩との出会いで気分が高揚していたこともあり快く返事した。 「うん、いいよ」 「え、小百合・・・?」 頷くと吹奈が不安そうにこちらを見つめてくる。 「新しい友達は大事だよ。 高校初日で友達ができるのはいいことじゃん」 「・・・そう、だね・・・」 渋々と吹奈はそれに頷く。 「やった! 二人はめっちゃお洒落だね? でももっとメイクを濃くした方が可愛さが目立つと思うんだよねー」 「ウチらがメイクしてあげるよ! ついでに髪色ももっと明るくしよ? アクセもたくさん付けてさー」 二人にそう言われギャル4人組が誕生したのである。 だがギャルになったことは特別気にしていなかった。 明るい二人にも囲まれ自分に自信が持てたのだから。 吹奈も次第に上手く付き合うようになり4人は楽しく過ごしていた。 そして小百合も恋に励んでいた。 「大志(タイシ)先輩! こんにちは!」 「おぉ、小百合か。 どうしていつも昼休みじゃなくて普通の休み時間に来るんだよ」 「昼休みは友達との時間を大切にしたいから」 「短い時間に会いに来るとか休まらないだろ」 「授業は疲れないんで大丈夫ですよ」 小百合は積極的に大志に話しかけていた。 三人には『好きな人がいる』ということは伝えてあるが『誰が』とまでは言っていない。 「先輩は今度の土日って空いていますか? よかったらアタシと一緒に」 「あー、部活が今忙しくてさ」 小百合の見た目は派手だが大志も派手好きで小百合のことを快く受け入れてくれた。 だが楽しく話はできるのにデートの誘いは毎回断られる。 「そう、ですよね・・・。 最後の大会があるんですもんね」 「あぁ、悪いな。 ここで怠けると今までやってきたことが無駄になるから」 「仕方ないです。 ・・・頑張っている先輩もカッコ良いから」 「そう言ってくれると俺も頑張れるよ」 大志は高校三年生で部活もこれで引退だと思えば大人しくしているしかなかった。 そしてある日の掃除の時間の時だった。 「・・・え?」 体育館掃除をしていた時、体育館の外で大志と吹奈が二人でいるところを偶然見かけてしまうのだ。
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