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「どういうこと? ・・・あの二人が知り合いだなんて初めて知ったけど」
そもそも小百合自身も大志を想っていることは誰にも話していない。 そのため吹奈が大志とどんな関係であろうが口を挟む資格はないのだが、心情的にはそうはいかないもの。
よく見てみるとどうやら大志が吹奈へ向かって深く頭を下げていた。
―――謝っている・・・?
―――いや、違う。
吹奈の様子がどこかおかしいためこれは大志からの告白だと悟った。
―――・・・そっか。
―――大志先輩は吹奈のことが好きだからアタシの誘いを断っていたんだ。
それを見て小百合は静かに背を向ける。 二人の関係がどうなろうが、そのようなシーンをこれ以上見ていられなかった。 沈んだ気持ちで机に伏しているといつも通りに吹奈がやってきた。
「ねぇ小百合、聞いて!!」
「・・・」
億劫な気持ちで顔を上げ、彼女の笑顔を見れば先程の光景がフラッシュバック。 いくら小百合でも先程の結果がどうなったのか聞くまでもなく分かった。
「さっき告白されて付き合うことになったんだぁー! 相手は先輩でさ!!」
―――・・・吹奈と大志先輩は付き合うことになったんだ。
この時はまだ先輩の名は言わなかったが、小百合は先程の光景を見ていたためすぐに分かった。 吹奈は大志と面識がなかったようだが相手の容姿がよかったためOKしたそうだ。
正直、小百合も似たり寄ったりではあるがそんな適当な気持ちでOKしたことに腹が立った。
「そうなんだ。 ・・・よかったね」
無理して作り笑顔を浮かべる。
「ところで小百合は最近どうなの? 好きな人とは」
「アタシのことは別にいいよ」
すぐさま報告してきた吹奈に顔を向けることができなかった。
―――吹奈はこんなに嬉しそうにしている。
―――でもそれはきっと先輩も同じ。
―――先輩がこれで幸せになるのなら・・・。
そう思い割り切ることにしたのだ。 小百合はそう思っていたのだが茉耶と千尋は違った。
「え? ウチらよりも先に男と付き合ったの?」
「うん、そうなんだ。 隠しておくのもあれかなと思って」
「しかも先輩からの告白って・・・」
報告すると自分に自信のある二人は先に彼氏ができたことに腹を立てていた。 それからだった。 吹奈がいじめられるようになったのは。
「吹奈、彼氏と登校するからって小百合との登校を断ったの!?」
「うん、でもそんなに気にしては」
「うわ、最低ー。 親友よりも男を取るんだ。 しかもアイツ最近付き合い悪くね?」
「どーせ毎日彼氏と一緒にいるんでしょ」
それを聞いて小百合は慌てて口を挟んだ。
「でも本当にアタシは別に気にしていないっていうか」
「そうはとても見えないけど? 小百合は無理し過ぎなんだよ」
最初は陰口だった。 吹奈がいないところで二人は悪口を言っている。 小百合の恋心は今も正直微妙だが仲のいい吹奈の悪口を聞かされればいい気分はしない。
「ねぇ? 本当は小百合もアイツがウザいって思うでしょ?」
「・・・え?」
二人がジッと見てくる。
「・・・アタシは、別・・・」
「何だって?」
「う、ううん。 そう、だね・・・」
「だよねー! 小百合分かってるー」
ここで吹奈を庇うと自分もいじめの標的にされると思い頷いてしまった。 その後二人にも彼氏ができたことはあったがすぐに別れてしまったようだ。 それから吹奈に更に八つ当たりをするようになった。
最初は陰口だったが今ではもう直接言うようになっている。
「本当に吹奈調子に乗り過ぎ。 目障りだしウザいわぁー」
それを目の前で言われた吹奈は勇気を出してこう言った。
「・・・アタシ、この輪から抜けるよ」
「はぁ? 抜けてウチらから逃げようとしてんの?」
「だって迷惑なんでしょ・・・?」
「迷惑なんて誰か一言でも言いましたー? ウチら4人仲よしじゃん、ねー?」
明らかに歪な関係。 ただ茉耶と千尋に鋭い眼差しを突き付けられるとまるで蛇に睨まれた蛙状態。 下手な作り笑顔を浮かべ肯定することしかできない。
「う、うん、仲よし、だよね」
「・・・そう、だね」
そのやり取りを見ながら空気のような存在にしかなれない小百合。 小百合は当然吹奈の味方のつもりだ。 だけどそれは吹奈と二人の時だけ。
学校で吹奈と二人でいると茉耶と千尋に何か言われるためツウィッターのDMでやり取りをすることが多かった。 当然見られたらマズいためパスワードは保存せず使う度にログインしログアウトしている。
そしてその関係は現在も続いていた。
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