九.裏クリプト絵巻じゃ!

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九.裏クリプト絵巻じゃ!

数十メートルの巨体となったリーリーは、降り立った勢いのままに街を破壊しながらいくつにも分身していく。 分身した各個体は大きく跳躍すると他のクランへと飛来し、大地を揺るがす咆哮を上げながら大暴れし始めた。 「リーリー!? どうして!? どうなってるの!? ねぇ!? どうしちゃったのリーリー!? リーリー!!」 「あぁ!? 私の街が!! 私の世界が!! SAKUYAザ・ワールドが!!」 「なんですの、その言い方は!? あんたの世界なんかじゃないですの!! でももうこうなってはマルサどころじゃないですの!!」 シャオラン、咲耶、ネムが、驚き怯えた叫びを上げる。 「リーリーは普通のパンダとは異なる忍パン(忍者パンダ)……。 あの種は一途で、あまりに寂しくなると暴走するんだ」 リーリーが引き起こす街の惨状を険しい表情で睨みながら、コンガがつぶやく。 「そんな……! ごめんねリーリー!! もう浮気なんてしないから!! お願いだから元に戻って!!」 シャオランが絶叫するも、リーリーには届いていないらしく、鎮まる様子は全く無い。 「どうするのどうするの!!」 「ヤバいですのマズいですの!!」 火の海と化していく伊賀シティを前に、咲耶たちはパニックに陥りかけていた。 が、その時。 「落ち着けぃ!! 三人で力を合わせてリーリーを鎮め世界を救うのじゃ!!」 彼女らの背後から岩爺の声が一閃し、三人は我に返って振り返った。 「岩爺! でも、一体どうしたら!?」 すがるような目の三人に、勇者・岩爺が胸の前で片手を開くと、まばゆい光と共に一本の巻物が現れた。 「裏クリプト絵巻じゃ! 本来こっちの世界にあったものがなぜかいつの間にか異世界に流れ、それを魔王が隠し持っていたのじゃよ! 忍の血を引く三人の娘が心を一つにして願えばどんな望みでも叶うという、伝説の絵巻じゃ!!」 「なんですって!?」 「そんな都合のいいものがあるんですの!?」 「早く使おうよ!!」 「うむ! それぃ! さぁ、唱えよ! 願え! お前たちが真に求める未来を!!」 岩爺が投げた絵巻を咲耶が受け取る。 そしてネム、シャオランと頷き合い、三人の手が絵巻に重ねられた。
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