十.願い

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十.願い

一歩後ろで、彼女らを見つめながらコンガが拳を握り締め、 「頼むぞ、三人とも……! リーリーよ、鎮まれ!! 世界に平和と安寧を!!」 絵巻に願いを叫ぶ中、 「そして、その世界を、我が手に……!」 咲耶が薄笑い、 「次は大臣とか大御所俳優とかの大捕物をしたいですの……!」 ネムが目を輝かせ、 「部長のルートがまだコンプしてないし、ハヤテ会長もそろそろイけそうだったし……えと、んと、あたし、(イケメンたち)みんなと仲良く暮らしたいなぁ……!」 シャオランが天真爛漫に舌を出した。 当然ながら絵巻は反応しない。 リーリーはさらに怒り狂い、口から放った光線が一瞬にして地平線のかなたまで炎の道を刻み付けた。 「何をやっておる! しっかりせんか!」 「す、すみません!」 岩爺の飛ばした叱咤(しった)の声に、三人が身を縮こまらせる。 「お前たちの望み、お前たちの求めていた未来は、アイドルで成功することだったじゃろうが! そのためには世界が平和でなければならん! そのためにはまずリーリーを鎮めねばならん! あれはお前たち『クリプト・リップ』の、大事なマスコットキャラクターなのだからな! もとよりパンダは世界平和の象徴たる人類の至宝! あのように暴れてマイナスイメージがついたらどうする! さぁ! 三人の心を一つにするのじゃ!!」 岩爺の手から放たれた雷槌(いかづち)が咲耶たちの前に降り注いだ。 「きゃぁっ!? ご、ごめんなさい、岩爺! ごめんなさい、リーリー!! ごめんなさい、世界のみんな!!」 「三人とリーリー、みんなで一緒の『クリプト・リップ』が世界を平和にするんですの!!」 「だからお願い、元に戻って!!」 三人が絵巻の上から固く手を握り合い、あふれこぼれ落ちる涙も気に留めず、大きく叫び願ったその声が、伊賀シティ、そして全てのクラン、さらには世界中へと響き渡った。
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