十一.ウタガスクウセカイ

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十一.ウタガスクウセカイ

一瞬、辺りを静寂が包み込んだ。 と、ふいに絵巻が強烈な光を放ち三人の手の中から飛び出すと、宙を舞い綴紐をちぎり、長い長い頁を開いていく。 絵巻に刻まれた古代の文字列が絵巻からはがれて渦を巻き、三人へと降り注いだ。 彼女たちには読めないはずのその文字列が、まるで頭の中に溶け込むようにはっきりと読み取れ、三人は半ば陶酔状態で立ち上がり、手をつなぎ合うと、ふいにそっと、歌い始めた。 「そうじゃ! それで良い! 三人の歌声は世界を変えるのじゃ!!」 初め小さかった歌声は、やがて少しずつ大きくなり、その力強い慈悲と癒やしを綴る壮大なバラードが最初のサビを迎える頃、まるで歌声に共鳴するかのように空が震え出し雲を呼び、光り輝く雪を降らせ始めた。 いや、よく見るとそれは雪では無い、小さな小さな、様々な手裏剣の形をした光の花であった。 花は宙できらめき、ガラス風鈴のような澄んだ音色を奏で、跳ね回るように踊りながら、世界中に、そして暴れまわる巨大リーリーへと降り注ぎ、包み込んでいく。 光に包まれたリーリーは、大きな咆哮を上げて滝のような涙を流し始めた。 その涙が大地へとこぼれ落ち川の流れを作り始めた頃、世界中のリーリーたちはふいに一斉に元の伊賀シティのリーリーへと戻った。 そして見る間にぐんぐんと縮んでいくと、ついには小さな子パンダとなって、地面に倒れた。 さらに光の花は焼け野原となっていた街を厚く包み込んではじけると、街は瞬時に元の姿を取り戻し、何事も無かったかのように人々は動き始めた。 やがて歌のラスト、ピアニッシモなハモリが空へと溶けゆき、絵巻が地面に落ちると、咲耶、ネム、シャオランは、はっと我に返った。
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