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二.回想
「この十年、色々ありましたね……。
長いようで短かったですが、ついにこの時が来たのですね」
コンガがわずかに瞳をうるませる。
「本当にね……。
十年前、クリプト絵巻を巡る戦乱のさなか、私とネムとシャオランの三人は、アイドルユニット『クリプト・リップ』として念願のデビューが決まった。
そして三人の歌声によって戦乱は終結したわ。
四つ揃った絵巻がまさか歌の歌詞で、それを三人の少女が歌うことで人々の争う心を鎮める力が発揮されるなんて、思ってもみなかったわよね」
「全くです。
素晴らしいご活躍でした」
「でも……」
咲耶が顔をしかめる。
「せっかく世界は平和になって、私たちのアイドル人生もこれからだと思ってたのに……。
いざ活動を始めてみたら三人の方向性が全く一致せず、クリプト・リップはたったの一年で解散。
所属していた事務所も、アレとかコレとかの不祥事が重なって倒産。
三人は結局それぞれに別々の人生を歩み出し、今に至る……」
「俺も脱忍してマネージャーとしてやっていこうと、決めたばかりだったんですがね」
遠い目で大きくうなずくコンガの肩に、歩み寄ってきた咲耶がすれ違いながら軽く手を置いた。
「でも、おかげで私は自分の中の別の才能に目覚めることができたわ。
極秘とされてきたありとあらゆる忍者の全てを、動画にしてグッズを作ってアミューズメントパークを建設して、さらにはマニュアル化して適当に一般人にも伝授したりなんかする、忍ばない会社『SAKUYAザ・ワールド』を起業して大成功。
昨年ついに忍術をオリンピック競技にまで押し上げたわ。
まぁ、その裏では、けっこうグレーというか、オニキス色というかカラス色というか墨汁色というか、なんかこう、色々やってきたものだけど」
「ほぼブラックですよね……。
ある意味で闇の世界を暗躍する忍者らしくもありますが」
自嘲気味に笑う咲耶に、笑みを返しながらも真剣な眼差しでコンガが答えた。
だがその時。
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