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四.異世界転生した老人はセクシー魔王を連れて現代に蘇りパンダを所望する。
「うおっ!?」
「何よ!?」
「眩しいですの!」
三人は腕で顔を覆い目を伏せた。
そしてやがて音と光が静まり、再びゆっくりと目を開いた視線の先には、
「よぉ、ただいま」
ドラゴンの装飾などを施した壮麗な鎧姿に大剣を携えた、どこからどう見ても異世界の勇者らしき若い男が、三人に向かって軽く手を挙げ微笑んでいた。
「……誰?」
「岩爺じゃよ」
「はぁっ!?
お爺ちゃん!?」
「えぇっ!?」
「本当に異世界転生してたんですか!?」
驚く咲耶たちに勇者・岩爺は、
「あぁ、すっかり外見が変わってしまっているんだったな。
異世界では赤ん坊からやり直したり、何回か死んだり若返ったり別の種族になったりしつつも無双っぽいことを色々やってきたんでの。
そんでこいつは、ワシが倒した後に邪気が抜けて仲間に加わった、元魔王のマオじゃ」
と、傍らの、とんでもないスタイルにとんでもなく肌を露出したコス、頭には黒山羊のような大きな角を生やした若い女性の肩を抱いた。
「マオでぇっすぅ。
みなさぁん、よろしくですぅ。
っていうかそんなことよりガンちゃぁん、あたしぃ、早くパンダが見たぁい」
抱かれるがままに身を持たれかけたマオが、甘ったるい声で岩爺の耳元にささやきかける。
「ははは、わかっておる。
おい、お前たち、シャオランはどこじゃ?」
「え?
あ、あぁ、シャオラン?
えと、シャオランは……」
あまりのことに気を失いかけていた咲耶が、我に返りつつも頭が回らず、コンガを振り返る。
「シャオランなら……確か何度か職やクランを転々として、今は伊賀シティのハヤテカンパニーにいるはずです」
「そ、そうでしたわね。
そしてそのハヤテカンパニーと言えば、明日には私が買収して傘下に収める予定でしたし……そうだ!
ちょうどいいわ!
今から行ってシャオランのついでにハヤテさんにもご挨拶をしておきましょう!
さ、そうと決まればお爺ちゃんも早く!」
「ん?あぁ」
咲耶が岩爺の手を引いて窓際へと駆け出した。
「ちょっと、上手いこと言ってドサクサに紛れて逃げるつもりですの?
マルサを甘く見ないでほしいですの!」
はっと気が付いたネムが『差し押さえ』と書かれた手裏剣型の札を投げ付けるが、咲耶は素早くそれをかわすと窓際の柱に手を触れた。
すると柱の中に隠されていたナンバーキーが現れる。
咲耶が数桁のコードを素早く入力しエンターキーをタップすると、ネムの目の前の床が鈍い音と振動と共に大きく開いた。
開いた穴の底では、鋭く細かい牙のような金属が恐ろしげな唸り声を上げて回転し始める。
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