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八.パンダ、暴走
岩爺の問いに、見開いたままの目で会議室に集った一同を見回し、しばらく首を傾げて考えていたシャオランであったが、
「……この際、細かいことは気にしなくていいことにしましょ」
持ち直した笑顔で頷くと、
「リーリーはねぇ、そういえば最近すっかり忘れてたなぁ。
あたしもう毎日毎日忙しくって(主にモテてモテて)。
ほら、また来たよ」
会議室の奥を指さした。
皆の視線が一斉に集まる中、いつの間にか部屋の隅に立っていた口髭のダンディが、そそくさとシャオランに歩み寄り、
「シャオ、妻子がいる身なのに君を愛してしまった私を、許してくれるかい?」
上目遣いにシャオランを窺う。
「うん、わかった!
忍ぶ愛ってやつだよね!
任せといて!
あたし昔忍者だったし!」
「ダメだ不倫だ!
それは忍者とは関係無い!」
思わず一歩前に出て声を上げるコンガだったが、それに対しちょっとふくれっつらを浮かべたシャオランは、しばしの無言の後、
「出ておいで!
リーリー!」
胸の前で召喚術の印を結んだ。
「ごまかすんじゃない!」
再びのコンガの声が虚しく会議室に響く中、ふいにシャオランの前に大きなパンダが姿を現した。
「あはは、しばらく見ないうちに大きくなったね、リーリー!」
十年前はバレーボールを二つ重ねた程度の子パンダだったリーリーは、すっかり大人になっていた。
「いや、しかしこれは大人のパンダにしても大きすぎやしないか?」
咲耶が首を傾げる。
「すごいね、リーリー!」
満面の笑顔で抱きしめようとリーリーに駆け寄るシャオランだったが、リーリーは低い唸り声を上げ、その腕を激しく振り払った。
「え……?」
腕を押さえ数歩後ずさるシャオランの前で、リーリーはさらに巨大に膨らみ始め、やがて天井を突き破りビルの壁を破壊し、大きな咆哮を上げて街へと飛び出した。
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