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龍宮寺姫香
身近な姫香もまんまと騙されたようだ。
ひと息つくと姫香が横目でボクを睨みつけた。
「ああァ〜あ、どうするのよ。藤丸君」
姫香はふて腐れた顔で文句を言ってくる。
「えェッ、どうするって?」
ボクのせいではないのに。
「運転手がいなくちゃ帰れないじゃん」
さすがお嬢様だ。由比正雪のことよりも運転手のことを気にしていた。
「ううゥン、そうだな。お家の方に連絡するしかないんじゃないの?」
恥ずかしながらボクはペーパードライバーなので、こんなデラックスな外車は運転したことがない。なにより下手に運転して事故でも起こしたら大変だ。
間違っても龍宮寺家のご令嬢、姫香を怪我させるワケにはいかない。
「ふぅん、仕方ないわね。じゃァ藤丸君、運転して送ってよ」
だが姫香はボクの心配をよそに運転を頼んできた。
「えェ、ボクが送るんですか?」
困惑してしまった。
いくら頼まれても、運転にはまるっきり自信がない。
「フフゥン、何よ。まさか私に運転できるはずないでしょ」
姫香は上から目線で微笑んだ。もちろん姫香は小学六年生なので運転できるはずはない。
「いやァ、まァそうですけど……」
仕方がないのか。だけど絶対に事故を起こすわけにはいかない。
「じゃァ、運転は代行業の方に頼んでタクシーで帰りましょう」
逆にボクは代案を提示した。
「ふぅん、わかったわよ。屋敷に電話して他の運転手に来てもらうから」
姫香もつっけんどんな物言いだ。
「はァ、申し訳ありませんが、そうしてください」
ボクは頭を下げた。しかし横から咲耶がしゃしゃり出てきて。
「フフッ、わかったわ。じゃァ咲耶が運転してあげてよ」
自慢げに微笑んだ。
「えェッ?」思わず姫香も眉をひそめた。
「いやいや、だって咲耶は女子高生なんだろう。免許がないじゃないか」
「フフッ、大丈夫よ。任○堂のマ○オカートで、ドライブテクニックを磨いたから運転技術には自身があるわ」
自慢げにグッと力こぶを披露してみせた。
「いやいや、あのねえェ。それはゲームの話しじゃないか!」
咲耶に運転を頼むくらいならボクが運転した方がまだマシだ。
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