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666
「藤丸君が警察へ届けたそうだね?」
興梠教頭がギョロッとした大きな目で睨みつけボクを名指しした。コオロキという名前の通り、コオロギみたいな顔だ。
「ハイ、ボクの実家はこの小学校の近くなので、早朝ジョギングのついでに学校を覗いてみたら校庭に机が並べてあって」
まったくの嘘ではない。早朝ジョギングをしていたのは事実だ。けれども本当は風魔小次郎と名乗る謎の仮面の忍者に呼ばれて小学校へやってきたのだ。
「ふぅん、それでその時、怪しい人影は見なかったのかね?」
「ええェッ、まァそうですね」
一瞬、風魔小次郎のことを報告しようか迷った。
しかしなぜか、風魔小次郎に呼ばれて小学校へ向かったと言うことは黙っていた。
理由は風魔小次郎がイタズラをした張本人だとは思えないからだ。
もちろん風魔小次郎が何らかの事件に関わりがあるとは思うが、彼が校庭に【666】と机を並べて何になるのだろうか。
『フッフフフ……』
その時、不意に笑い声が響いてきた。
「えェ……?」
慌てて、みんなキョロキョロと視線を巡らせた。
「う、この笑い声は?」
ボクが叫ぶと同時に、会議室のド真ん中につむじ風が起きて木の葉が舞った。
「キャァーーーッ」
女性教師が悲鳴を上げた。つむじ風に長い髪やスカートが翻った。
凄い勢いで木の葉が舞っていく。
「ううゥ……」こんな事をするのは彼女に違いない。
みんな両手で飛んでくる木の葉を避けていた。
徐々に木の葉の中から忍者らしき姿を現わした。
「フフゥン、忍ばない! 甲賀の女忍者 咲耶。華麗に見参!」
やはり咲耶の笑い声だったようだ。派手なパフォーマンスでの登場に教職員たちも茫然としていた。彼女は忍者のコスプレをしていた。
こんな時でも咲耶の手には、いつものように自撮り棒を持ったままだ。
「なッ甲賀のくノ一だって?」
教師たちはあ然としていた。教職員の中で咲耶のことを知っているのはボクと校長先生くらいだ。
まるでライブパフォーマンスでもするように咲耶は会議室の端から端へ指を差した。
「いくぞォ。アリーナァーーーーッ!」
咲耶は派手なジェスチャーで盛りあげていた。
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