愛を信じないオメガの選択

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いい歳したおっさん二人が何してるんだろう。まるで付き合いたての高校生カップルのようだ。そう思っていたら、ノノがふと思い出したように呟いた。 「そう言えばトアの歳を訊いてなかった。トアは何歳なの?」 その言葉にドキッとする。そう言えばノノの誕生日が今日ということで話がそれたけど、オレたち歳の話をしてたんだった。だけどオレは即答出来ない。なぜならノノが年下だとは思って無かったからだ。 しかも六歳も年下だったなんて。 てことは、初めて会った時のノノは24歳だったってことだよね。全然そうは見えなかったけど、オレ、そんなひよっこに手を出したってこと? 十年も前の話なのでもう時効と言えば時効なのだけど、未だ関係が続いているせいか妙な罪悪感がある。別に未成年や学生に手を出した訳では無いので全くの合法なのだけど、なんだろう。もやもやしてしまう。それにノノだって、まさかオレが今年で40などとは思ってもいないだろう。 「トア?」 いつまでも黙りこくってるオレをノノが呼ぶけど、オレは返事が出来ない。 このまま寝たふりをして誤魔化そうか。 そう思ったけれど、ノノの病院に行くことを約束してしまったことを思い出す。 だめだ。 今言わなくても、どうせIDでバレる。 それに気づいてオレは黙ったままベッドから降りてカバンから財布を出すと、そこからIDカードを取り出してノノに渡した。 きょとんとしたままカードを受け取ったノノは、それを見て少し目を見開く。 きっと生年月日を見て驚いたんだろうな。 ごめん。 オレ、若くなくて。 そう思ってノノのリアクションが怖くて下を向いていたオレの耳に、ノノの嬉しそうな声が飛び込んできた。 「来月だね」 想定外のその言葉にオレが顔を上げると、ノノが喜んでるのが見えた。 ?? 「トアの誕生日だよ。終わってなくてよかった。僕もおめでとうが言いたかったから。この日は空けておいて。僕にお祝いさせてよ」 にこにこと笑うノノに、オレは拍子抜け。 「はい。ありがとう。しまったら早くおいで。寒いでしょ?」 そう言ってIDをオレに返して布団を上げるから、オレはいそいでIDをしまうとまたそそくさとノノの腕の中に戻った。 「なに?」 思わずノノを見上げたオレに、ノノが聞いてくる。 「・・・それだけ?」 「何が?」 「気になるところ。誕生日だけ?」 生年月日の生年、見てないの? 「あぁ、もしかして歳のこと?」 ちゃんと見てた。 「少し驚いたけど、それよりもトアを年下として見てた自分の方が恥ずかしくて・・・。だからスルーしたのに・・・」 と、最後はごにょごにょと口の中で言った。 年上ぶってた自分が恥ずかしいっこと? 「それだけ?オレの歳に引かなかった?」 「引く?なんで?」 「だって六個も年上だし、今年40だよ?」 そこまで言ってもノノにはあまり響かなかった様で、きょとんとしている。 「特に気にならないけど?何歳だろうとトアは綺麗で可愛いいし、こうやって言われて見ても40にはとても見えないよ。それより僕の方が心配なんだけど。年下で大丈夫?」 大丈夫?って、こっちが訊きたかったんだけど、ノノはノノで自分の歳を気にしてるなんて・・・。 なんか変なの。 なんだかおかしくなって笑ってしまう。 「大丈夫に決まってるだろ?若干罪悪感があるけど」 「罪悪感?」 「出会った時だよ。ごめんな、こんなおっさんが手を出して、て」 その言葉にノノは少し考える。 「おっさんじゃなかったけど?」 「見た目じゃないの。気持ちなの。30代と20代では天と地の差があるんだよ」 40代と30代もだけど。 「・・・確かに今思うと20代は若いよね」 「だろ?」 「でも付き合いたてじゃないんだから、もう関係ないよ。それに僕達親になるんだし。年の差なんて、今更だよ」 ね?とお腹に話しかけてるけど、さっき気にしてたのはどこの誰だか。 なんか本当にノノのキャラが変わった。しかも歳下だと分かると余計幼く見えたりするけど、冷静に考えたら34は立派なおじさんだ。幼いわけが無い。 だけどなんだろ。 可愛いよな。
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