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部屋は仔猫がいないいつもの状態に戻り、あとは晴さんが帰ってくればいいだけなのに、空腹だけは満たされただろう仔猫がちゃんと身を隠せる場所にたどり着いただろうかと思うとやはり胸が痛む。
玄関のドアが開いたのはそんな時だった。
「椿、寝てるのーっ?」
あの声は・・!
あぁ、やっぱり猫を追い出したから? わたしの思い込みじゃなかったんだ。
荷物を抱えた晴さんがリビングのドアを開けて入ってきた。
んっ?????
もう片方の手には仔猫を抱えて。
「その猫・・・」
「逃げ出したのか? 外をウロウロしてたぞ」
「・・そっ、そんなことより、いままでどこに行ってたのよ! 電話も繋がらないし、ほんと心配したんだから」
そう言うと、彼は風呂敷包みをテーブルに置き、
「いつも一生懸命に料理作ってくれてるだろう? せめて正月くらい楽をしてもらおうと思って、お袋に頼んでおいた料理を取りに実家に行ってた。すぐに帰れると思っていたのに、初詣客の車の渋滞に巻き込まれてさ。だけど、サプライズなんだから連絡できなくて参ったよ。それに、仔猫の餌も必要じゃないかと思って。椿のことだから、このまま飼ってやるんだろう?」
そう言って、猫缶をポリ袋から出した。
「そんな・・」
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