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よく見ると、その雌が、息を飲むほど美しかったからだ。
毛並みは日に映えて赤く輝き、両耳は羽のように大きく、深く青い目の上に、人間の眉に似た黒い毛が生えている。
「ニャニャニャ(君はヤマネコ族なの)?」
「ニャ、ニャ、ニャニャ(あたしはカラカル族のリベルティナよ)」
「ニャッニャ(ぼくの名はヴァン)。
ニャニャ、ニャニャ(君は、海を渡って、遠くから来たの)?」
「ニャッ、ニャニャ、ニャニャ(いえ、あたしは5年前に、あたしをペットにしようとした人間から自由になるため逃げ出して、ここへ来た)」
「ニャニャ、ニャニャ(すごいジャンプだね。驚いたよ)」
「ニャニャニャ、ニャニャニャ、ミャニャン(ごめんなさいね。あなたがイエネコ族のくせに、いきがって1本抜きジャンプをするから、からかったのよ)」
――なんだって!
消えていた怒りが、再び湧いてきた。
「ニャッ、ニャニャッ(かわいいのに、性格わるいんだね)!」
「ニャッ、ニャニャッ(まっ、やっぱり生意気)!」
そう言うとリベルティナは、同じ枝の上で、何回も垂直に飛び跳ねた。
回を重ねるごとに枝が大きくしなり、リベルティナの体がどんどん高く舞い上がる。
5回、6回と跳び、枝が折れそうなほど撓ったとき、リベルティナは、
「ニャッニャニャ(あんたに、こんなことできないでしょう)!」
と言い放ち、次の瞬間には空高く舞い上がり、両手両足を広げて麓の方に消えていった。
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